保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
東京湾富津干潟における海草藻場の長期空間動態
山北 剛久仲岡 雅裕近藤 昭彦石井 光廣庄司 泰雅
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2005 年 10 巻 2 号 p. 129-138

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抄録

航空写真を用いたRS/GISにより東京湾富津干潟の海草藻場の変化を1967年から36年間にわたり解析した.2004年に行った現地調査との比較から,航空写真からの目視判定により海草藻場の分布は約70%の精度で判別可能であることがわかった,海草3種(アマモ,タチアマモ,コアマモ)の識別はできなかった.海草藻場の面積は最大1.79km^2(1986年)から最小0.60km^2(2001年)まで著しく変動した.分布域は1969年から1986年にかけて沖側に拡大し,1986年以降は変動しながら減少する傾向が見られた.富津沖の水質の変化は小さく,海草藻場の面積変化とは対応しなかった.一方,砂洲の地形的変化は海草藻場の分布,特に沖側の境界線の位置の変化と対応した.開放的性質を持つ富津干潟の海草藻場の空間動態には,埋立てや砂洲の変動などの物理的プロセスが重要な役割を果たしていると考えられる.500m四方で区切った小区画ごとに面積の変動を解析したところ,藻場面積の時間的変異のパターンは小区画間で大きく異なることから,場所により異なる要因が関与していることが示された.変動の大きさは各小区画において全体よりも大きいことから,場所ごとに非同期的に増減をすることが,藻場全体の安定的な存続に関与していると考えられる.

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© 2005 一般社団法人 日本生態学会

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