沖縄島におけるオリイオオコウモリPteropus dasymallus inopinatusの個体数の長期モニタリング(2000年から実施)において、近年個体数の増加傾向が見られた。調査はルートセンサス法を用いて、沖縄島の都市部と森林部の2ヶ所で行った。都市部では2001年9月から2009年8月に、森林部では2004年と2008年の2年間調査を行った。両調査地ともにここ4〜8年間の間で個体数がおよそ3倍に増えていた。またこの目撃個体数の増加は全ての季節で見られた。これらの結果は、オリイオオコウモリの目撃数の増加が空間的な偏りの変化ではなく、沖縄島個体群自体の増大を意味するものであることを示す。沖縄島に接近した台風の数は2005年以降減少しているが、これは個体群の成長率の上昇のタイミングと一致していた。以上のことから沖縄島のオリイオオコウモリの個体群サイズは台風による攪乱頻度によって調節されている可能性があることが示唆された。今後、地球温暖化により台風の攪乱が不規則になると、本亜種の個体数変動が不安定になり、個体数増加による農業被害の拡大とともに地域個体群の絶滅が起こる可能性が高まることに注意する必要がある。