2011 年 16 巻 1 号 p. 121-126
北海道知床半島において2007年12月から2010年4月までに捕獲された698個体のエゾシカ切歯の切片標本を作製し、顕微鏡下で齢査定した。同半島の北部と東部に当たる知床岬地区と羅臼地区の標本において、5才以下の若齢層、特に2004年・2005年生まれ個体の欠落が認められた。越冬死亡数の経年変化は若齢層の欠落と整合しており、冬期の気候が主な死亡要因であると考えられた。同様の傾向は他の地区では目立っておらず、冬期の環境収容力が同半島内の場所により異なることが示唆された。