保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
原著
シナリオ分析に基づいた竹林の管理計画立案
宮崎 祐子三橋 弘宗大澤 剛士
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 20 巻 1 号 p. 3-14

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抄録
近年、管理を放棄した竹林が隣接地に拡大し、景観や生態系を乱す現象が問題になっている。集落等の小規模な単位で局所的な整備事業は進められているが、広域的な管理計画に基づく整備はほとんど行われていない。効率的に竹林整備を行うためには、広域を対象に適切な手法によって構築したモデルを用いて拡大の可能性が高い場所を予測し、管理労力を集中するといった計画を立案しなければならない。しかし、タケ類のように人為的に導入された移入種かつ栄養繁殖を行う植物の分布拡大予測は、不均質な侵入履歴や分布の偏りや隣接効果などの制約事項が多く、さらに環境要因に対する非線形応答を示す場合もあり、一般的な統計モデルの適用が難しい。そこで本研究では兵庫県豊岡市において1976年と2007年の間の竹林拡大から上述の問題を統制した上で、侵入確率の高い場所を予測する空間明示モデルを構築し、実際の管理に向けた将来予測を行った。予測手法には機械学習法の一つであるMaxEntを利用し、1)栄養繁殖の影響を統制するため既存の竹林パッチから拡大可能な範囲を明らかにし、2)予測範囲をその範囲に絞った上で侵入確率について物理環境を説明変数として予測モデルを構築するという2段階の解析を実施した。モデル構築の第1段階の結果から、広域的に見た場合、竹林の拡大には拡大前の竹林パッチからの距離が強く貢献しており、物理的環境要因の制約は顕著ではないことが示された。このことはクローン増殖を行うタケ類の生理的統合による栄養分等の転流が物理環境の影響を軽減していることを示唆している。完成したモデルは1976年から2007年の間の拡大を約70%説明することができた。モデルを利用して複数の管理シナリオ下における将来予測を行った結果、小面積の竹林から優先的に除去を行うことが将来の竹林面積を縮小させる上で最も有効であることが示された。得られた結果に基づき、竹林の管理計画立案に向けた課題を議論した。
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© 2015 一般社団法人 日本生態学会

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