保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
調査報告
三重県多度イヌナシ自生地における絶滅危惧種マメナシの訪花昆虫相
牧村 郁弥鶴田 燃海山崎 和久向井 譲
著者情報
キーワード: 絶滅危惧IB, 送粉者, ナシ属
ジャーナル オープンアクセス

2015 年 20 巻 2 号 p. 197-202

詳細
抄録

栽培ナシと近縁なナシ属の野生種マメナシは、愛知県と三重県にのみ分布する東海丘陵要素の植物の一つである。絶滅危惧IB類に指定され、様々な保全活動が進められる一方で、マメナシの更新に必要不可欠な個体間での送粉をどのような送粉者が担っているのかについては、これまで全く調べられていない。そこでマメナシの送粉者を明らかにすることを目的に、三重県桑名市多度町のマメナシの自生地において訪花昆虫相の同定を行った。マメナシの開花初期・満開期・散り始めの3日間の捕獲調査で、合計で573個体、10目25科にわたる昆虫を採取した。これらの中には、他の植物においても重要な送粉者であるとされるミツバチ科やヒメハナバチ科などのハチ目(26.0%)に加え、ハナアブ科やツリアブ科などのハエ目(57.4%)の訪花が多く確認された。またこれらの昆虫は、マメナシの満開の時期に最も多く訪花していた。頻度に加えマメナシのフェノロジーと関連した訪花により、ハナバチ類(ミツバチ上科)やハナアブ科の昆虫がマメナシの主要な送粉者であると推察された。

著者関連情報
© 2015 一般社団法人 日本生態学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top