保全生態学研究
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Print ISSN : 1342-4327
調査報告
那珂川水系における特定外来生物カワヒバリガイの侵入状況
伊藤 健二
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 21 巻 1 号 p. 67-76

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抄録
2005年以降、利根川水系の霞ヶ浦では特定外来生物カワヒバリガイの生息が確認されているが、霞ヶ浦から管水路を経由した導水が行われている那珂川水系では2013年までの調査でカワヒバリガイの生息は確認されていなかった。しかし2014年11月、那珂川水系内の貯水池である笠間池(36°20'17''N 140°10'52''E)においてカワヒバリガイの生息が確認された。笠間池は霞ヶ浦からの導水を受けており、この導水によってカワヒバリガイの浮遊幼生もしくは成貝が侵入したものと考えられる。本種の那珂川水系への侵入状況を明らかにするために、笠間池とその周辺の水路と河川、及び笠間池から取水している不動谷津池において調査を行った。笠間池では湖岸の約半分の地点からカワヒバリガイが採集され、採集地点は主に流入工・取水口に近い部分だった。もっとも密度が高かった場所は10分間の調査で124個体が採集された。採集個体のサイズと過去に報告された成長データから、本種は遅くとも2013年には笠間池に侵入していたと推察された。笠間池から周囲に水が流出する水路の1地点からカワヒバリガイが採集されたが、この水路が流入する河川と、笠間池から取水している不動谷津池からは採集されなかった。那珂川水系へのカワヒバリガイの分布拡大や被害発生を抑制するために、特に霞ヶ浦から取水する那珂川水系内の水利施設やその周辺河川では、カワヒバリガイの生息状況調査や根絶を目的とする対策を実施することが望ましいと考えられた。
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© 2016 一般社団法人 日本生態学会

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