2017 年 22 巻 2 号 p. 351-360
滋賀県長浜市木之本町を流れる農業水路において、イシガイ科二枚貝類(以下、イシガイ類)の生息状況、およびイシガイ類の密度と水路環境との関係を明らかにすることを目的に研究を行った。2015年10月?11月に水路の物理環境とイシガイ類の生息状況を調査した結果、マツカサガイ、カタハガイ、タガイ、ササノハガイ、オバエボシガイ、タテボシガイ、ニセマツカサガイの7種合計347個体のイシガイ類が採捕された。ニセマツカサガイを除く6種について、それぞれの密度と水路環境との関係について一般化線形モデル(GLM)を使用して解析した。その結果、マツカサガイとカタハガイは砂が多く、底質が硬く、水深が浅い場所、タガイは砂が多く、底質が硬く、水深が浅く、流速が遅い場所、ササノハガイは砂が多く、底質が硬い場所、タテボシガイは底質が硬く、流速が遅い場所に多い傾向が示された。オバエボシガイについては、密度と環境要因との関係が不明瞭であった。イシガイ類保全のために水路環境の保全・復元を行う場合、種間差に配慮して多様な環境を維持・創出することが必要と考えられる。