2020 年 25 巻 1 号 論文ID: 2002
都市における緑地の機能として健康との関係が確認されているが、市街地と緑地のどちらでも実施可能な屋外での日常的な活動において、実際に緑地が選好されているかどうかについての研究はほとんどない。人々の行動と自然環境の関係を定量的に見出すことが出来れば、日常生活における緑地の文化的生態系サービスの選好的な利用が明らかになると共に、緑地を活かした都市づくりや関連したサービスを発展させやすいと考えられる。そこで本研究では、現代の主要な屋外活動の一つである「犬の散歩」に着目し、散歩する際のルートと緑地環境の関係性を調査することで、人の行動と自然環境には関係があるのか、また、どのような環境を好むのかを調べた。神奈川県内の市街地と緑地環境の両方を有する 8か所で犬の散歩をしている人にアンケートを行い、普段の散歩ルートの記入をお願いした。都市の環境の構成を「オープンな緑地」「森林」「市街地」の 3つに分け、散歩をしていたルートの環境をその周辺地域の環境と比べたときのずれから、環境の選好性を定量化した。市街地の嗜好度を 1.0として相対的な選好度を推定すると、オープンな緑地の中央値と 25および 75パーセンタイルは 2.18(2.04 -2.32)となり、市街地と比べるとオープンな緑地環境は 2倍以上有意に好まれていた。ただし森林では 1.34(1.14 -1.55)であるが 95%水準で有意でなく、犬の散歩における森林の選好度はオープンな緑地より有意に低かった