2021 年 26 巻 1 号 論文ID: 2020
過疎化が著しく、シカが高密度になって林床植生が乏しい状態にある山梨県早川町のシカの食性を糞分析により明らかにした。いずれの季節でも栄養価の低い繊維・稈などの支持組織が多く、栄養価の高い緑葉は少なかった。春には繊維が 45.0%、稈・鞘が 17.7%と多く、緑葉は 10.3%に過ぎなかった。夏も繊維( 54.6%)と稈・鞘( 14.2%)が多かったが、双子葉植物が 13.5%に増加した。秋は緑葉が 36.0%と年間で最も多くなった。これは新しい落葉を食べたものと推定した。冬の糞組成は最も劣悪で、繊維が 82.7%と大半を占め、緑葉は微量( 2.5%)しか検出されなかった。早川町のシカの食性は他のシカ生息地と比較しても劣悪であった。シカの食性とシカの管理、特に過疎化との関連に言及した。