保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
調査報告
都市近郊水田における昆虫個体数に対する殺虫剤散布と飛翔捕食者の影響
日野 輝明渡辺 直人小笠原 史織片山 好春
著者情報
ジャーナル オープンアクセス
電子付録

2022 年 27 巻 1 号 論文ID: 2023

詳細
抄録

総合的病害虫管理( IPM)および総合的生物多様性管理( IBM)を推進していくためには、殺虫剤による化学的制御だけではなく天敵による生物的防御についての定量的評価を行う必要がある。本研究では、都市近郊水田に殺虫剤の散布と防護ネットによる飛翔捕食者の除去の有無を組み合わせた 4つの簡易的な実験区( 7m×7m)を設置して、昆虫の個体数比較を行った。実験区間での個体数変化を目別に比較すると、殺虫剤散布区で減少したのは、カメムシ目、バッタ目、ハエ目、コウチュウ目、捕食者除去区で増加したのは、カメムシ目、バッタ目であった。昆虫全体の個体数の 85%を占めた主要害虫のカメムシ目では、トビイロウンカ Nilaparvata lugensが殺虫剤散布区で個体数減少、ヒメトビウンカ Laodelphax striatellusが天敵除去区で個体数増加、ツマグロヨコバイ Nephotettix cincticeps、イナヅマヨコバイ Recilia dorsaris、マダラヨコバイ Psammotettix striatus、ヒメヨコバイ Empoasca vitisが両方の変化を示した。したがって、本研究で行った簡易的な実験によって、飛翔捕食者と殺虫剤散布は水稲害虫個体数を減少させるのに効果的であったのに対して、殺虫剤散布は害虫以外の節足動物の個体数を減少させることが示された。

著者関連情報
© 2022 著者

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top