論文ID: 2017
日陰の形成や蒸発散に伴う夏季の温度低減効果は、都市緑地がもたらす重要な生態系サービスである。現在の都市緑地は少なからず外来植物によって形成されており、これは地域の生物多様性に悪影響をもたらす場合があるが、在来、外来といった由来による温度低減効果の違いを検討した研究は、調査設計の困難さ等によりほとんど見られない。そこで本研究は、植栽種の由来の違いによる温度低減効果の差を比較するため、航空写真、衛星プロダクト利用というリモートセンシングと現地調査を組み合わせるアプローチを確立し、東京都心部の都市公園に適用した。在来種のみで形成された都市緑地と、在来、外来種が混在する都市緑地が近接する日比谷公園において、 9月の盛夏に撮影された航空写真の熱赤外線画像から得られた放射温度と土地被覆の関係を検討したところ、樹木、芝生ともに温度低減効果があることが示された。さらに現地調査結果を利用して放射温度と樹種の由来、種数、個体数、葉の特性との関係を検討したところ、同等の樹高、樹冠面積を持つ緑地であっても、構成樹種の由来によって温度低減効果が異なる可能性が示された。ただし、各種要因を統制したために統計的な比較を行うために十分なサンプルを得ることができず、樹種の由来による温度低減効果の違いについて議論を深めることはできなかった。本手法をより多地点、複数地域に適用することで、樹種の由来に起因する生態系サービスの違いを検討することができるようになるかもしれない。