論文ID: 2122
暖温帯林における主要な優占樹種シイノキ類(スダジイ、コジイおよびその雑種)の林は日本各地で保護上重要な特定植物群落に指定されており、その中には孤立して残存する小面積の社寺林も多い。シイノキ類は虫媒であることが知られているが、都市に残るシイノキ林の繁殖・更新および遺伝的多様性を維持する上で重要な中・長距離の孤立林間の送粉者の候補を明らかにすることを目的に、本州中部の都市・名古屋市の都市孤立林でシイノキ類訪花昆虫相を調査した。観察のみの記録も含めると、合計 6目 33科 45属 65種以上(種までの同定に至らなかったものも 1種と数えた場合)が記録された。特に日没後も調査を行ったことで夜行性の蛾類も多種が訪花していることが確認できた。生態的特徴などから推測すると、シイノキクロカスミカメ、エグリヅマエダシャク、スズメバチ類、アシナガバチ類、コマルハナバチ、コアオハナムグリが、都市域における有力な中・長距離のシイノキ類の送粉者の候補ではないかと考えられた。