論文ID: 2221
要旨:都市の公園における地表植生は裸地化を防ぐことで地面に座る場所を提供し、雨天直後にも泥濘化せず、また乾燥時の砂ぼこりや土壌の侵食を防ぎ、雨水を浸透させて洪水を防ぐなどの生態系サービスを提供する。都市内には歴史的な背景により種組成が異なるさまざまな緑地が存在することが知られており、埋立地などに新しく造成された公園では里山の林床に生育する耐陰性種などが種プールから欠落している可能性があるため、林縁や林床における生態系サービスの低下が危惧される。この研究では、首都圏の都市域にあるさまざまな公園において種プールの生態特性(耐陰性および踏圧耐性)を調査し、生態系サービスと関連が深い地表植生の葉面積指数への影響を解析した。公園における葉面積指数は光環境のみでなく踏圧の影響も受けるため、土壌貫入抵抗値を用いて踏圧の影響を考慮した。種プールの種組成における耐陰性種の欠落は、公園の林縁や林床における葉面積指数の低下につながっていた。本研究で検出された耐陰性種はドクダミ、ジャノヒゲ、チヂミザサ、ヘクソカズラ、アズマネザサ、スゲ属などの在来種であり、近世の里山が残存している公園の種プールにはこれらの耐陰性種を含む傾向がみられた。公園内の樹冠下における生態系サービスを向上させるためには耐陰性が高い在来種を含む種プールが重要であり、公園のリノベーションや造成に当たっては、在来の耐陰性種が消失しないよう園内の歴史的里山を保全する対応が望ましい。