保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327

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マゲシカCervus nippon mageshimaeの遺伝的独自性についての再検討
兼子 伸吾亘 悠哉高木 俊人寺田 千里立澤 史郎永田 純子
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論文ID: 2302

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抄録

マゲシカ Cervus nippon mageshimae Kuroda and Okadaは、その形態的特徴によって記載されたニホンジカ C. nipponの亜種である。しかし、2014年の環境省のレッドデータブックの改訂に当たっては、亜種としての分布域が不明瞭であり、分類学的な位置づけが明確でないとされている(環境省 2014)。その一方で、近年実施された遺伝解析の結果からはマゲシカの遺伝的独自性が示されつつある。その遺伝的特徴から、マゲシカの分布域を明らかにし、近隣に生息するヤクシカ C. n. yakushimae(屋久島および口永良部島)やキュウシュウジカC. n. nippon(九州本土)との関係性を議論することが可能となってきた。そこで本研究では、マゲシカの遺伝的な特徴やその分布について、先行研究において報告されているミトコンドリアDNAのコントロール領域のデータを中心に再検討を行った。その結果、マゲシカの分布域とされる馬毛島および種子島の個体は、キュウシュウジカだけでなくヤクシカとも明確に異なる塩基配列を有していた。また核DNAやY染色体DNAに着目した先行研究には、マゲシカの生息地である種子島とヤクシカの生息地である屋久島間で対立遺伝子頻度に明確な違いがあることが示されていた。形態については、馬毛島および種子島のニホンジカと遺伝的にもっとも近いヤクシカとの間に明瞭な違いがあることが先行研究によって示されていた。一連の知見から、少なくとも馬毛島と種子島のニホンジカを九州に生息するニホンジカとは明確に異なる保全単位として認識することが適切であること、さらに2島間にもミトコンドリアハプロタイプの頻度をはじめとする集団遺伝学的な差異が存在する可能性が高いことが示唆された。

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