保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
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岩手県におけるニホンジカの増加に伴うオオバナノエンレイソウ南限個体群の衰退
真崎 開富松 裕
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論文ID: 2313

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Abstract

要約:オオバナノエンレイソウは、北日本の夏緑樹林に生育する林床植物で、IUCNレッドリストにおいて絶滅危惧II類に指定されている。著者らは、岩手県と秋田県の南限個体群を対象として2013年から継続観察を実施してきたが、岩手県内の個体群周辺で近年ニホンジカが急増している。本稿では、主に2013−2022年の9年間にわたる個体群の変化に基づき、ニホンジカによる影響について検証した。岩手県内の2つの個体群では、2017年以降に被食率の上昇が見られ、赤外線内蔵カメラを用いた調査から、主な植食者はニホンジカだと考えられた。被食を受けなかった開花個体は多くが翌年も開花したのに対して、被食を受けた開花個体の半数以上は翌年に非開花の生育段階(三葉段階)へと後退した。その結果、どちらの個体群でも三葉段階の割合が2019年以降は顕著に上昇し、2022年には開花個体が3個体ずつにまで減少していた。一方、ニホンジカの増加が緩やかだと考えられる秋田県の個体群では、被食率や三葉段階の割合に目立った変化は見られなかった。岩手県では、かつて開花していた個体の多くが死亡しておらず、まだ三葉段階として残存していることから、現在はニホンジカによる影響が顕在化してきた初期段階にあると考えられる。また、エンレイソウ属はシカによる影響をいち早く受ける植物でもある。これらのことから、今後、短期間のうちに林床植生への影響が更に大きくなる可能性がある。

Translated Abstract

Abstract:Trillium camschatcense, listed as ‘vulnerable’ in the IUCN Red List, is a perennial plant growing in the understory of broad-leaved deciduous forests of northern Japan. While we have been monitoring the demography of three southernmost populations in Iwate and Akita Prefectures since 2013, there has been a rapid increase in the number of Japanese sika deer in Iwate. In this report, we analyzed changes in the populations during 2013–2022 to examine the impact of deer browsing. We found that the two Iwate populations have shown an increase in per capita herbivory rates since 2017. Infrared cameras suggest that the main herbivore responsible is the Japanese sika deer. Compared to reproductive plants that were not consumed by deer, consumed plants were more likely to regress to the three-leaf stage (nonreproductive stage) in the following season. Consequently, the proportion of the three-leaf stage markedly increased since 2019, and the number of reproductive plants has decreased to only three individuals each in 2022. In contrast, herbivory rates and the proportion of the three-leaf stage did not show notable changes in the Akita population, where the increase of deer is not as pronounced. In Iwate, many individuals that were previously in the flowering stage have not died and are still surviving in the nonreproductive stage, suggesting that we may currently be in the early stage of deer overbrowsing. Given that Trillium populations are highly susceptible to and among the first to be affected by deer browsing, their impact on understory vegetation may further increase in the near future.

保全生態学研究 (Japanese Journal of Conservation Ecology)

J-STAGE Advance published date: ●●, 2024

https://doi.org/10.18960/hozen.2313

*〒990-8560 山形市小白川町1-4-12 山形大学理学部

Faculty of Science, Yamagata University, 1-4-12 Kojirakawa-machi, Yamagata 990-8560, Japan

e-mail: htomimatsu@sci.kj.yamagata-u.ac.jp

2023/04/02受付、2023/10/20受理、2024年●月●日早期公開(J-STAGE)

著作権は著者に帰属する. Licensed under CC BY 4.0

はじめに

 オオバナノエンレイソウTrillium camscatcense Ker Gawl. は、岩手県と秋田県を分布南限とするシュロソウ科の多年生草本である。ヤチダモFraxinus mandschurica Rupr. やハルニレUlmus davidiana Planch. var. japonica(Rehder)Nakaiなどが優占する夏緑樹林の林床に生育し、北海道では石狩平野や十勝平野を中心に数ヘクタールにも及ぶ大規模な群落が見られるが、分布南限の個体群はいずれも小さく、低密度で、孤立している。また、近年の森林開発により本種の個体数は減少しており(Tomimatsu and Ohara 2006a)、2020年には国際自然保護連合(IUCN)によって新たに絶滅危惧II類(VU)に指定された(Chauhan 2021)。岩手県のレッドデータでも同ランクに(岩手県2014)、秋田県では絶滅危惧IB類(EN)に指定されている(秋田県2014)。エンレイソウ属植物はシカの嗜好性がとても高く、シカの影響拡大の初期から被食される傾向があることから、エンレイソウ属植物のサイズや生育段階の構成はシカによる採食圧の指標となりうる(Anderson 1994; Inatomi et al. 2017)。エンレイソウ属植物の個体群においてシカによる大きな影響が顕在化してきたとすれば、それは今後、周辺植生が変容していく初期段階にある可能性がある。

日本では、1978年から2003年にかけてニホンジカCernus nippon Temminck の分布が70 % 近く拡大した(環境省自然環境局生物多様性研究センター 2004)。岩手県では明治期以降、1980年頃まではニホンジカが五葉山周辺のみで局所的に生息しており、「北限のホンシュウジカ」として保護されていた(高槻 1992)。しかし、その後に個体数が増加し、近年では周辺県にまで分布が拡大している(岩手県 2022)。丹沢や日光、大台ケ原など、本州の他地域では数年から20年ほどの間に林床植生が顕著に衰退してきたことから(湯本・松田 2006)、東北地方でも今後短期間のうちに影響がさらに大きくなるかもしれない。

著者らは、岩手県と秋田県のオオバナノエンレイソウ南限個体群を対象として、2013年から継続観察によるデモグラフィー(個体群統計)調査を行ってきた(図1a)。生存や成長、繁殖のスケジュールを調べることは、個体群が環境に対してどのように応答するのかを理解する上で有効であり、植物では多数の種において生育段階間の推移や繁殖数のデータが蓄積されてきた(Salguero-Gómez et al. 2015)。オオバナノエンレイソウにおいても、分布域の中心である北海道で長期データが取得されており(Tomimatsu and Ohara 2010;富松ほか 未発表)、個体群動態を北海道と比較する目的で岩手県と秋田県でも調査を開始したが、COVID-19感染拡大の影響により調査を中断せざるを得なかった2020−2021年の前後で、岩手県の個体群周辺においてニホンジカの捕獲数が急増した(岩手県 2022)。個体群から5 kmほどしか離れていない早池峰山ではニホンジカが既に山頂付近にも出没し、ナンブトウウチソウSanguisorba obtusa Maxim. などの固有種を含む高山植物への影響が懸念されていることからも(鈴木 2018)、周辺地域で生息密度が上昇している可能性が高い。時を同じくして、岩手県内ではオオバナノエンレイソウの開花個体が減少し、2022年には花を見つけるのも困難な状況になっている。本稿では、主に2013 - 2022年の9年間にわたる個体群の被食率や生育段階構成の変化に基づいて、ニホンジカによる影響を検証した結果について報告する。

方 法

対象種と個体群

オオバナノエンレイソウは毎年4月下旬に地上部を出し、7月頃まで生長した後、塊茎により越冬する春植物(spring ephemeral)である(図1b)。近縁種のミヤマエンレイソウT. tschonoskii Maxim. とは、花がやや上向きで、子房に赤褐色の部分があることなどで区別される。本種は、地上部の形態から4つの生育段階(実生、一葉、三葉、開花)に分類することができ、発芽から開花に至るまでには約10年を要する(大原 2004;図2)。成熟した個体は開花を繰り返しながら数十年は生存するが、ときどき花をつけない三葉段階への後退が見られる。開花は5月で、交配様式や花形態には地域間で分化があり(Ohara et al. 1996; Tomimatsu and Ohara 2006b)、分布南限の個体群は開花個体が小さく、小型の花をつける傾向がある。また、林床植物の中でも、アーバスキュラー菌根菌と特に密接な菌根共生が見られる(Murata-Kato et al. 2022)。

調査は、岩手県宮古市区界(約750 m2の範囲に生育する)、紫波町山屋峠(約2200 m2)、秋田県仙北市刺巻(約1800 m2)の3つの個体群で行った(図2)。岩手県では近年ニホンジカが顕著に増加しているが、刺巻の周辺を含む秋田県では増加が比較的緩やかである。岩手県内の個体群が含まれる北上山地南部地域では2020年度の捕獲数が約18,000頭と多く、2016年以降の4年間で約2倍に増加した(岩手県2022)。同じ岩手県内でも、秋田県寄りの奥羽山脈地域での捕獲数は243 頭とはるかに少なく、さらに秋田県内においては県全域で捕獲数が30頭、目撃数も87頭に過ぎない(秋田県 2022)。また、岩手県北上山地南部地域の捕獲数は、秋田県寄りの奥羽山脈地域(243頭)と比べても桁違いに多い。したがって、刺巻個体群はニホンジカによる影響が小さいコントロールとして捉えることができる。山屋峠および刺巻では周辺に他の個体群が無く、孤立している。それに対して、区界高原には他にも小規模な自生地が確認されているが、本研究では個体数が最も多い国有林内の個体群を対象とした。調査個体群はいずれもヤチダモやハルニレ、イタヤカエデAcer pictumThunb. が優占する自然林だが、山屋峠はカラマツLarix kaempferi(Lamb.)Carrièreの植林地に跨っている。

調査

1)デモグラフィー調査

調査は、個体群内に1 × 1 mの方形区を設けて行った。方形区の総面積は区界が13 m2、山屋峠が9 m2、刺巻が4 m2である。区界と山屋峠では個体群の全域にわたって方形区を配置したが、刺巻では木道が整備されていない場所に配置したため、調査を実施したエリアが限られている。

調査では、2013年から2022年まで毎年5月上旬の開花期(ただし、2020−2021年を除く)に、方形区内の全ての個体をアルミニウム製のタグで標識して生残および生育段階の変化を調べた。また、被食の有無を記録した。被食を受けた個体は草丈の高い三葉および開花段階で、ほとんどは葉や花が全て食べられて茎の下部だけが残っていた(図1c)。5月の調査以降に受けた被食は記録していないが、生育期間の早期に被食を受けた場合に、翌年の運命(生残、休眠、生育段階の後退)に及ぼす影響が顕著である(富松 未発表)。また、オオバナノエンレイソウは、年によって地上部を出さずに休眠することがある(vegetative dormancy;Shefferson 2009)。休眠は最大でも1年間であり、2年以上休眠した後に再び地上部を出した個体は見られなかったことから、2年連続して地上部が観察されなかった個体は死亡したものとみなした。なお、2020年および2021年にはCOVID-19感染拡大の影響により調査を実施できなかったため、デモグラフィーの分析には2019年までのデータを用いた。

2)植食者の特定

エンレイソウ属植物の主な植食者は草食性の大型動物(ニホンジカやカモシカCapricornis crispus Temminck)だと考えられる。現在の主な植食者がニホンジカであることを確認するために、区界と山屋峠において赤外線センサー内蔵カメラ(Focuhunter MZJ-NVP-0024, Guangzhou, China)を用いた野生動物の自動撮影を行った。カメラ3台(区界2台、山屋峠1台)を設置し、2022年5月4日から8月26日にかけて動画を撮影した。カメラは、閉鎖林冠下の林床植生とニホンジカの両方が画角に収まるように樹木の幹(高さ1.3 m)に固定した。一回につき30秒の動画を撮影し、一度撮影した後は次の撮影まで少なくとも30分の間隔を空けるようにした。得られた画像を確認し、撮影された動物種とその個体数、植物を採食する行動の有無を記録した。

データ解析

岩手県においてニホンジカの増加がオオバナノエンレイソウ個体群に影響を及ぼしているとすれば、近年になって被食率が上昇したはずである。このことを検証するために、ロジスティック回帰分析を行った。三葉および開花個体における被食の有無を応答変数、調査年を説明変数とし、個体群毎に分析した。

北米に生育する同属のT. grandiflorum(Michx.)Salisb. では、開花個体が早期にシカによる被食を受けると、多くが三葉段階へ後退することが報告されている(Knight et al. 2009)。オオバナノエンレイソウにおいても開花個体の運命(死亡、もしくは翌年も生存していれば次の生育段階)が被食を受けた時と受けなかった時とで異なるかを、Fisherの正確確率検定を用いて検証した。十分な個体数を分析するため、分析は全ての個体群で得られたデータをプールして行った(被食を受けた個体N = 25,受けなかった個体N = 292)。なお、被食を受けたことにより生育段階を確認できなかった場合も、その前年が開花段階であった場合に、当年も同じ生育段階であることを仮定して分析に含めた。実際には、被食を受けた個体に大型の三葉段階が含まれていると考えられるため、前年が開花段階であった三葉個体のうち、被食を受けなかった個体も含めた解析を合わせて行った。また、翌年も連続して被食を受けたために、その後の生育段階を確認できなかった個体(N = 1)は分析から除外した。

個体群や年による生育段階構成の違いは、対数線形モデル(log-linear model:Quinn and Keough 2002;Caswell 2001)を用いて分析した。対数線形モデルは、高次の分割表におけるセルの頻度(ここでは個体数)を応答変数とし、誤差構造にポアソン分布を仮定した一般化線形モデルである。個体数は生育段階により異なるため、生育段階と個体群、年の3つを説明変数とし、個体群や年による生育段階構成の違いは、それぞれの効果と生育段階との間の交互作用の有無だけが異なる2つのモデルの適合度(G2)を比較する尤度比検定により検証した。全ての統計解析にはR ver. 4.2.2(R Core Team 2022)を用いた。また、データはJ-Stage Dataで公開されている(Masaki and Tomimatsu 2024)。

結果と考察

岩手県の区界および山屋峠個体群では、三葉および開花段階の被食率が年とともに上昇する傾向が見られた(ロジスティック回帰分析, 区界:z = 3.87, P < 0.001;山屋峠:z = 1.73, P = 0.08;図3a-b)。区界個体群では、被食率が年とともに直線的に増加しているとは言えなかったが、2017年以降に高く、最大で42.9 %(2018年,N = 49)に達していた。逆に、秋田県の刺巻個体群では被食率が年とともに低下していた(z = −2.56, P < 0.01:図3c)。この結果は、岩手県内においてニホンジカが増加したことと対応していた。区界と山屋峠において撮影された動物11種(述べ895個体)のうち、ニホンジカが89.8%(804個体)と大部分を占め(付表1)、メスが子鹿を連れて行き来している様子が頻繁に観察されるなど,最大で11頭の群れが見られた。また、植物の採食が確認できた動物のほとんど(97.7 %)がニホンジカであったことから、岩手県の個体群におけるオオバナノエンレイソウの主な植食者はニホンジカだと考えられた。

被食を受けなかった開花個体(N = 292)の運命は、被食を受けた開花個体(N = 25)と有意に異なっていた(Fisherの正確確率検定,P < 0.001)。被食されなかった個体では、その72.3 % が翌年も開花し続けたのに対して、被食を受けた個体は大部分(72.0 %)が三葉段階へ後退し、死亡率も24.0 % と高かった(図4)。また、前年が開花段階であった三葉個体のうち、被食を受けなかった個体も含めて解析を行った場合も、被食を受けなかった開花個体の運命に大きな差はなく(開花段階に留まる67.6 %、三葉段階へ後退27.3 %、死亡5.2 %)、結果の解釈には影響を及ぼさなかった。

生育段階構成は個体群や年によって有意に異なっていた(付表2)。区界および山屋峠個体群では開花個体の割合が低下し、三葉段階の割合が上昇しており(図5a-b)、この傾向は2019年以降に顕著だった(図6)。また、これらの個体群では、2019年以降に実生がほとんど観察できなかった。被食による三葉段階への後退は、このような生育段階構成の変化に寄与したと考えられる。開花個体が被食を受けると、その年だけでなく、三葉段階へ後退することにより翌年の繁殖機会も奪われる可能性が高い。多くの個体が被食されると実生の加入が減少することも、三葉段階の割合の増加に寄与しているであろう。三葉段階の増加は、全体的に個体サイズが減少していることを意味し(Ohara and Kawano 1986)、生育場所である森林が分断された後など個体群がストレスを受けた際に見られる応答である(Tomimatsu and Ohara 2002)。刺巻個体群においても方形区内の開花個体数が減少する傾向が見られたが、三葉段階の割合に目立った変化は無く、2022年にも多くの実生が確認できた(図5c)。刺巻では被食率が上昇していないことからもニホンジカによる影響は小さいと考えられ、現地での観察から、沢沿いに生えていた開花個体が増水時の撹乱によって影響を受けた可能性が考えられた。

2022年5月に、方形区外も含めて個体群全体で開花個体数を調べたところ、刺巻では多数(> 300)の開花個体が見られたが、区界と山屋峠ではどちらも3個体にまで減少していた。しかし、区界から1 kmほど離れた別の自生地では46の開花個体を確認することができ、以前と同等の密度が維持されているように見受けられた。区界と山屋峠において未だ多数の個体が死亡せずに三葉段階として存続していることを考えれば(図5a-b)、現在はニホンジカによる影響が顕在化してきた初期段階だと言えよう。北米の近縁種を対象とした先行研究(Knight et al. 2009)では、被食率が15 % を超えると個体群成長率(λ)が1を下回り、絶滅へ向かうことが予測された。この研究では、大型の三葉段階と開花段階の被食率を調べており、被食されにくい小型の三葉段階は含まれていない。このため、私たちの調査ではKnight et al.(2009)よりも被食率が低く見積もられているが、それでも区界では2017年から2019年にかけて、山屋峠では2022年に15 % を超える被食率が観察された。今回は、サンプル数が少ないことから個体群成長率を推定していないが、現在の状況が続けば、さらに個体数が減少して個体群が消失することも懸念される。ニホンジカの侵入防止柵は個体群を回復させる上で有効だと考えられるが(Kalisz et al. 2014)、大規模な柵を設置するコストは大きい。ただ、小規模な柵であっても、将来ニホンジカの密度が低下した際に回復のソースとなり得る植物を維持できることが期待される(Shinoda et al. 2022)。また、本種を含めて林床植生が大きく衰退してしまうと、その後に柵を設置しても元の植生に回復しない可能性がある(Tamura 2016; Otsu et al. 2019)。影響が広範囲で懸念されるなか、限られたリソースをどこに傾けるのかが問題だが、地域本来の植生を維持するためには早期に防鹿柵の設置を始めることが重要であろう。

謝 辞

調査を実施するにあたり、JSPS科研費(JP26840140, JP17K07553)および稲盛財団研究助成による支援を受けたほか、三陸北部森林管理署、盛岡森林管理署および所有者から許可を頂いた。岩手県立博物館の鈴木まほろ氏には、調査を始める際に岩手県内の自生地について調べていただいた。山岸洋貴、佐々木駿、川村弥司子、村田怜、佐藤莉咲、村山瑛信、坂詰七美の諸氏には野外調査をお手伝いいただいた。記して御礼を申し述べたい。

著者情報

ORCID

Hiroshi Tomimatsu https://orcid.org/0000-0003-0262-6480

データ利用

オオバナノエンレイソウの南限3個体群における被食率とデモグラフィー構造の2013-2022年にわたる変化はJ-STAGE Dataにて公開されている(https://doi.org/10.57345/data.hozen.24902802)。

  

図1

(a)調査を行ったオオバナノエンレイソウの南限個体群、(b)区界個体群の開花個体、(c)被食を受けた個体。茎の根本に見える番号は個体標識用のタグである。

図2

オオバナノエンレイソウの生活環グラフ(Tomimatsu and Ohara 2010)。数字は異なる生育段階を表し、地下で発根した種子(ステージ0)、実生(ステージ1)、一葉(ステージ2)、三葉(ステージ3)、開花(ステージ4)である。矢印は1年後に可能な生育段階の推移を表す。種子は7月に散布されるが、発芽後にシュートを出し、実生となるのは翌々年である。Springer Natureより許諾を得て転載

図3

オオバナノエンレイソウの三葉および開花段階における被食率の年変化。エラーバーは ± 1標準誤差を表し、ロジスティック曲線をあわせて示した。2020-2021年はCOVID-19感染拡大の影響により調査を実施していない。

図4

被食を受けなかった時(N = 292)と受けた時(N = 25)の開花個体の運命。被食を受けた後は、三葉段階へ後退したり、死亡する場合が多いことが分かる。

図5

各個体群における生育段階構成の年変化。2020-2021年はCOVID-19感染拡大の影響により調査を実施していない。個体群により調査を行った面積が異なることに注意されたい。

図6

三葉段階の割合の年変化。区界および山屋峠個体群では、2019年を境に三葉段階の割合が顕著に上昇したことが分かる。COVID-19感染拡大の影響により2020-2021年は調査を実施していない。

References
 
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https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
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