論文ID: 2406
山間地域の農村集落において、耕作放棄による農地の減少と、伝統的な土地利用の消失による景観構造の不均質性の低下を促進する要因を明らかにするとともに、景観構造の変化が集落の生物群集の種組成に与える影響について、複数分類群間で比較することを本研究の目的とした。長野県小谷村の隣接する2地域において耕作放棄の進行程度が異なる20集落を対象に、鳥類、チョウ類、地表徘徊性甲虫類、植物の種組成を集落間で比較した。GLM解析により1950年代から現在にかけての農地の減少と景観の不均質性(景観のシャノン多様度指数)の低下には、家屋数(労働力)と年間の総日照量(作物の生産性)が有意に影響していることが示された。こうした景観構造の変化が各分類群の種組成に明瞭に影響していることがNMDS解析により確認された。年一化性チョウ類の個体数の増加に寄与することがGLM解析により示されるなど、特に生物群集の機能的組成の決定に景観構造の変化は有意に影響していた。このように山村集落の存続に影響するような自然的要因と社会・経済的要因に応じて、景観構造の変化程度が異なり、景観構造の変化が生物群集の種組成や機能的組成の成立に影響していることが明らかになった。