2008 年 2 巻 1 号 p. 109-114
出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeをモデル生物として用い、非致死的な圧力の効果を遺伝子の発現および機能面から網羅的に調べた。DNAマイクロアレイ解析の結果、DAN/TIRファミリー遺伝子の転写レベルが高圧下(25 MPa, 24 °C)で著しく増大することがわかった。同様な転写増強は、細胞を低温下(0.1 MPa, 15 °C)で培養したときにも見られた。DAN/TIR遺伝子は細胞壁タンパク質をコードしているが、通常の培養条件下(0.1 MPa, 24 °C)でほとんど発現していない。実際、高圧や低温処理した細胞は、細胞壁溶解酵素や低濃度のSDS、あるいは致死的レベルの高圧(125 MPa)への耐性を獲得した。このことは、細胞による高圧と低温の認識機構には共通点があること、および環境適応において細胞壁の強化が重要であることを示唆している。