2008 年 2 巻 1 号 p. 115-121
メタボロミクスとは、生体中の有機酸、アミノ酸などの低分子化合物や代謝物質を網羅的に解析することであり、ゲノミクス、プロテオミクスに続き注目を集めている新規研究分野である。キャピラリー電気泳動-質量分析法(CE-MS)は、イオン性代謝物質を網羅的にかつ定量的に測れる極めて有望な分析手法である。本研究では、モデル生物として酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用い、高圧ストレス応答時の代謝ネットワークの変化を捉えるために、CE-MSを用いてアミノ酸を中心とした代謝産物の定量的変化を測定した。酵母の高圧ストレス応答では、多くのアミノ酸が増加し、代謝系の亢進を支持する結果が得られた。バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンなどの疎水性アミノ酸類の増加は、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析結果だけではなく、代謝産物の観点からも組織の損傷やタンパク質の分解亢進を示唆する結果が得られた。