抄録
マウス赤白血病 (MEL : Murine Erythroleukemia)細胞に100 MPaの高圧処理を行うと、ミトコンドリアの膜電位低下、カスパーゼ3の活性化やDNAラダーなどのアポトーシスに特徴的な現象が見られることが報告されている。今回、アポトーシスに伴う細胞の形態変化、カスパーゼ3の活性化経路、細胞内の水の状態変化について検討した。カスパーゼ8とカスパーゼ9の阻害剤を用いた解析から、100 MPaの高圧処理をした細胞で見られるカスパーゼ3の活性化には、カスパーゼ8とミトコンドリアを介する2つの経路が関与していることがわかった。高圧処理した細胞の走査型電子顕微鏡による観察は、細胞膜表面の平滑化を示した。また、1H-NMRによる細胞内の水のスピン‐格子緩和時間 (T1)の測定から、高圧処理直後では細胞からの水の流出が、180分間培養した細胞ではアポトーシスの進行に伴い、細胞内への水の流入が考えられた。