釜淵森林理水試験地では2018年10月に2号沢(尾根沿い)と4号沢(谷近く)で作業道開設と小面積間伐が行われ,材積伐採率は2号沢3.5%,4号沢4.4%と推定された。小規模施業が多雪地域の水流出に及ぼす影響を明らかにするため,施業前後での月流出量の変化を解析した。基準流域1号沢との月流出量の比を比較すると,4号沢では6月の月流出量比が施業後に増加したが,漏水のある4号沢では月流出量比と月降水量に正の相関があり,施業後に降水量の多い年があったことが原因と推察された。8月の2・3号沢の月流出量比も漸増傾向であったが,施業とは別の原因と考えられた。さらに,厳寒期,融雪期,暖候期に分けて1号沢との月流出量の関係を解析したが,いずれの時期,流域でも施業前後で違いは認められなかった。今回の施業では作業道も含めて除去された樹木が極めて少ないため,水流出量に明瞭な変化が現れなかったと考えられる。