本研究目的は,健常高齢者を対象に床の側方移動に対してつり革の把持と外乱予告が下肢の筋活動に与える影響について明らかにすることとした。対象は,健常高齢男性11名(平均年齢75.9±7.0歳)であった。測定は,右側方に床面が移動する外乱に対して,つり革把持と予告の有無の条件を組み合わせた計4条件において下肢の安静時筋活動量と最大筋活動量を算出した。各条件における測定値の比較は,つり革条件と予告条件を2要因とする反復測定分散分析後,交互作用が認められた項目のみ多重比較を行った。その結果,つり革を把持することで多くの下肢筋の安静時筋活動量および最大筋活動量が減少し,外乱予告を行うことで外乱方向に依存した筋において最大筋活動量が減少することがわかった。以上のことから,つり革の把持と床の側方移動のタイミングの予告によって,少ない筋活動量で立位姿勢を保持できることを示した。