抄録
[目的]TUG に計算課題を付加した二重課題TUG(DT‐TUG)の成績と認知機能および転倒歴との関連を検討した。[対象]虚弱高齢者30名(84.7±4.1歳)。[方法]単一課題TUG(ST‐TUG)に加えて,3種の連続減算(100‐1,100‐3,100‐7)をそれぞれTUG と同時に行うDT‐TUG‐1,DT‐TUG‐3,DT‐TUG‐7の遂行時間を測定した。ST‐TUG とDT‐TUG‐3は動画観察から歩行異常性についても採点した。ST‐DT 間の成績変化率をdual‐task‐cost(DTC)として算出した。認知機能検査は文字流暢性課題(LFT),色彩線引きテスト(CTT),レイ聴覚言語性学習検査(RAVLT),MMSE を行った。過去6か月間の転倒の有無を調査した。[結果]連続減算の数字が大きくなるにつれDT‐TUG 時間が有意に延長した。DTC‐1はCTT,RAVLT,MMSE と,DTC‐3はCTT と,DTC ‐7はCTT,MMSE と有意な相関を認めた。転倒有無別の2群間でDTC に有意差を認めなかった。[結語]付加する計算課題の難度の増加に伴い歩行に要する時間は増大した。歩行時間の変化には注意機能が最も関係していた。