[目的]転倒リスクの評価としての咬合力測定の有用性を検討するため,転倒スコアと咬合力の関連性を検証した。[方法]対象はデイケア利用の虚弱高齢者34名(男性10名,女性24名)とした。平均年齢は83.0±5.7歳であった。咬合力の測定にはオクルーザルフォースメーターGM10を使用した。転倒リスクの評価は,転倒スコア(Fall Risk Index ‐21:FRI‐21)を用いた。転倒関連因子として,大腿四頭筋筋力,老研式活動能力指標,高齢者抑うつ尺度,主観的健康感尺度を評価した。ステップワイズ法による重回帰分析を用いて,FRI‐21と独立して関連する項目を抽出した。[結果]FRI‐21と独立して関連の認められた項目は,主観的健康感尺度と咬合力であった。[結論]咬合力の評価は高齢者の転倒リスクの評価の一つとして有用である可能性が示された。
本研究の目的は,最速歩行時の3軸加速度よりリヤプノフ指数を求めて,ADL 尺度,脳血管疾患患者における歩行機能との関連を検討し,リヤプノフ指数の有用性を明らかにすることである。対象は,脳血管疾患患者24名(男性18名,女性6名,平均年齢70.0 ±11.8歳)とした。3軸加速度計は第3腰椎棘突起部付近に装着し,最速歩行時の3軸加速度を測定した。1歩行周期のデータからリヤプノフ指数を算出して,最速歩行速度,歩数,歩行率,Barthel Index との関係を検討した。満点群のリヤプノフ指数は,前後方向において有意に高値を示し,非満点群のリヤプノフ指数は,垂直方向において有意に高値を示した。また,脳血管疾患患者の歩数と垂直方向が有意に相関した。これらの結果から,リヤプノフ指数を用いた歩行解析は,動揺性を測定できる方法のひとつであり,リヤプノフ指数は歩行安定性の定量化の指標として有効な手段となり得る可能性があることが示唆された。