抄録
〔目的〕高齢者における最速歩行時の身体動揺性と膝伸展筋力,足把持力,握力との関連を分析し,身体動揺性に影響を及ぼす筋力因子について検討した。〔方法〕地域在住女性高齢者66名を対象とした。身体動揺性には,小型無線加速度センサを用い,5m最速歩行時における3軸加速度を計測した。加速度波形より上下動揺性,前後動揺性,左右動揺性をそれぞれ算出し,膝伸展筋力,足把持力,握力との関連を,ピアソンの相関係数および重回帰分析を用いて検討した。〔結果〕上下動揺性は膝伸展筋力,足把持力,握力との間に有意な相関を認めた。また,前後動揺性は足把持力との間に有意な相関を認めた。一方,左右動揺性はいずれの筋とも有意な相関を認めなかった。上下動揺性および前後動揺性に影響を及ぼす因子として,足把持力のみが抽出された。〔結語〕足把持力は,高齢者における歩行時の身体動揺性を予測しうる可能性がある。