2024 年 32 巻 p. 34-38
Ti2O3などの低原子価チタン酸化物では,空気暴露によって粒子表面に存在するTi3+が容易にTi4+に酸化される.また,Ti2O3の粒子表面だけでなく粒子内部のTi3+までも酸化されると粒子内部がTiO2に構造変化してしまう問題がある。本研究では,Ti2O3を合成するための原料TiO2に対してあらかじめ酸化を受けにくい異種金属を混合し,この原料を還元することによってTi2O3を合成し,粒子内部の酸化とそれによる構造変化の抑制に取り組んだ.この方法によって,それぞれ5 mol%のAl,V,Crを取り込んだTi2O3が得られた.これらの異種金属の導入によってTi2O3の酸化開始温度が大きく上昇し,異種金属の導入による酸化抑制効果が実証された.異種金属の導入は,逆水性ガスシフト反応におけるTi2O3の触媒活性および耐久性の向上にも効果的であった.