本研究では,ピッカリングエマルション(Pickering emulsions)の自発解乳化を,乳化粒子の表面に吸着した粒子と界面活性剤との交換反応を利用して実現する新しい試みに挑戦した.界面活性剤の吸着膜は,通常は2次元液体膜(膨張膜)を形成するため被覆率が低く,乳化粒子の表面に吸着しても粒子を完全に排斥することはできないが,本研究では,著者らが独自に発展させてきた吸着膜の相転移により,液滴の表面に界面活性剤の2次元固体膜(凝縮膜)を形成することによって,油水界面に吸着している粒子を相転移に連動して脱着させ,ピッカリングエマルションを自発的に解乳化させることに成功した.
ピッカリングエマルションの解乳化には、微粒子を温度などの外部刺激に応答して液滴表面から脱着するように化学修飾することが一般的である。本研究では、界面活性剤の吸着膜の相転移現象を応用して、液滴表面で微粒子と界面活性剤の交換反応を誘起することで新規なピッカリングエマルションの解乳化法を提案している。
固体高分子形燃料電池や水電解などの高性能・高耐久化に向けて,多孔質構造と高い電気伝導性を有する金属酸化物担体の開発が大きな関心を集めている.火炎エアロゾルプロセスにより合成したイリジウム-酸化チタン(Ir–IrO2/TiO2)粒子は,熱的・化学的に安定であることに加えて高い電気伝導性を有することから,固体高分子形燃料電池用触媒担体として高い耐久性を示すことが示されている.本研究では,Ir–IrO2/TiO2粒子の電気伝導性の向上および熱的安定性を調査するために,火炎エアロゾルプロセスで合成した粒子に焼成処理を施し,電気伝導性と粒子形態に与える影響を評価した.焼成処理を行う前は,Ir–IrO2/TiO2粒子は多孔質かつ球状の構造をもち,非晶質なIr–IrO2種が均一にTiO2表面を覆う形態を有していた.750°Cでの焼成後において,Ir–IrO2/TiO2粒子中のIr–IrO2は結晶化したが,球状の多孔質構造を維持しており,優れた熱安定性を示した.このとき,Ir–IrO2/TiO2粒子の電気伝導度は,焼成前の1.05 S/cmから,750°C焼成後では1.85 S/cmまで上昇し,Ir種の結晶性の向上により導電性が向上することが明らかになった.これらの成果は,さまざまな用途における触媒性能の最適化に向けた重要な指針となる.
本研究では,イリジウムおよび酸化イリジウムを含む酸化チタン系触媒担体(Ir–IrO₂/TiO₂)を火炎プロセスにより合成した。焼成処理が電気伝導性に与える影響を調査した結果,750 °Cでの処理により導電性が向上することが明らかとなった。本研究で開発した触媒担体は,特に高い電気伝導性と耐久性が求められる固体高分子形燃料電池用の触媒担体に有用である。
本研究では,高い生体分解性を示し,安全性が高いことから,製剤分野において注目されている金属有機構造体(MOF)の一種であるシクロデキストリン(CD)を有機配位子として調製したCD-MOFを対象に,新たな吸入微粒子キャリアとしての適用を試みた.噴霧乾燥法により作製したCD-MOF粒子は貧溶媒晶析法で作製したものに比べると,高用量のレボフロキサシン水和物を含有させることに成功した.また,肺への送達率も貧溶媒晶析法と噴霧乾燥法で作製した粒子を比較すると非常に高くなっていることが確認できた.さらに,吸入合剤の設計を目指し,4-アミノサリチル酸とイソニアジドを噴霧乾燥により調製した粒子は共結晶の形成が認められ,異なる性質の薬物を肺局所に同時送達することに成功した.
シクロデキストリン系金属有機構造体(CD-MOF)は,その高い生分解性と安全性により,医薬品分野で注目を集めている。スプレードライ法によって生成したCD-MOF粒子は,高濃度のレボフロキサシン含有に成功し,高い肺への送達率を達成した。さらに,吸入合剤の設計を目指し,4-アミノサリチル酸とイソニアジドを用いてスプレードライ法で調製された粒子は,共結晶の形成を示し,異なる特性を持つ薬物を同時に肺に局所送達することを可能にした。
本研究では,微細粉末を用いた放電プラズマ焼結(SPS)法と熱処理により優れた力学特性を有する超微細粒Znを作製した.SPSにより作製した焼結材はランダムな結晶方位を有する微細粒で構成されていた.また,熱処理により焼結材の結晶粒界近傍における転位密度が低下した.焼結および熱処理により作製された試料は優れた力学特性を示し,特に650 Kで熱処理した試料は80%以上の高延性を示した.この優れた力学特性は,微細な結晶粒および変形中に生じる動的再結晶に起因すると考えられる.これらの結果は,SPSと熱処理を組み合わせた手法がZnの高強度・高延性化に向けた有効な戦略となり,新たな生体材料としての応用可能性を示唆するものである.
亜鉛はその優れた生体親和性と生分解性から新たな生分解性インプラント材料として注目を集めているが,力学特性に課題があり,その産業応用は制限されている。本研究では,アークプラズマ法により作製した亜鉛超微細粉末の焼結および熱処理により,従来の亜鉛と比較して数倍の強度と数十倍の延性を同時に実現することに成功した。また,その優れた力学特性が微細な結晶粒径と室温動的再結晶に起因することを明らかにした。
有機半導体は,資源豊富で,分子設計により機能調整でき,塗布できるなど,優位性が多い.特にn型有機半導体は,complementary metal-oxide-semiconductor(CMOS)回路に必須なため需要が高い.しかし課題もあり,n型有機半導体は,無機やp型より移動度が低く,トランジスタで1 cm2/Vsを達成できれば,既存のp型と組み合わせたCMOS創製に繋がる.本研究では,n型有機半導体の分子配列が移動度に大きく影響することに着目し,有機塩の結晶性粉末による分子配列制御に挑戦した.
本研究は,分子の種類の制約により,p型と比べて研究が遅れているn型有機半導体の電子移動度の向上を目的としている。固体材料の機能は分子の構造と配列に依存するため,n型有機半導体の機能開拓と性能の最大化に向けて,有機塩の結晶粉末による分子配列制御に挑戦した。研究遂行の中で,金属フリーなn型有機半導体ポリマーの作製手法を新たに発見しており,結晶とポリマーの両軸でn型有機半導体の性能向上に取り組んだ。
電界を印加した粒子充填層による帯電微粒子の捕集
公開日: 2019/06/25 | 14 巻 p. 104-110
中島 耀二
多孔質セラミックス担体による高耐久性電極触媒の開発
公開日: 2025/05/25 | 32 巻 p. 135-139
Thi Thanh Nguyen HO, 荻 崇
シクロデキストリン金属有機構造体による吸入合剤設計
公開日: 2025/05/25 | 32 巻 p. 54-57
門田 和紀
高分子添加スラリーの固練りによる分散メカニズムの解明
公開日: 2025/05/25 | 32 巻 p. 58-62
北村 研太
多孔性錯体の同位体認識機構の解明と応用展開
公開日: 2017/02/03 | 23 巻 p. 215-217
平出 翔太郎, 宮原 稔
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