Ag担持触媒はエチレン選択酸化反応等で利用されている.その触媒性能向上には,いかにAgを微粒化するかが重要な課題となっているが,Agのタンマン温度が低く,容易に凝集するため微粒化が困難であった.本研究において,燃焼反応場で誘起されたAg/TiO2間の相互作用(Strong Metal-Support Interaction, SMSI)によりAgクラスターを安定化することで,1 nm~2 nmのAgクラスターをTiO2に20 wt%担持可能であることを見出した.SMSI発現に由来するTiOxの生成量はAg量や燃焼条件により変化した.H2パルス滴定により測定したAg表面積は,Ag担持量の増加によって増加したが,Ag量が30 wt%以上の場合に表面積はほぼ一定であった.TiO2に担持されたAgクラスターの安定性は,燃焼合成条件,Ag担持量,酸化チタンの比表面積に依存することが示唆された.今後は開発したAg/TiO2触媒が活性を示す触媒反応を探査する予定である.
Agクラスターは特異な触媒特性により注目されている.しかしAgは他の貴金属より熱的安定性に乏しいため容易に凝集するという問題があった.本研究では,燃焼反応場で誘起されたAg-TiO2間の金属-担体間の相互作用を利用することで,TiO2表面にAgクラスター(1~2 nm)が安定化されることを見出した.この相互作用を利用することで,20wt%Ag/TiO2におけるAgクラスターが,少なくとも350○Cで2時間は安定であることを報告した.
ナノ粒子の最も簡便な細胞毒性試験として,赤血球を用いた溶血性試験が広く用いられている.しかしながら,ナノ粒子の溶血作用メカニズムは未だによく理解されていない.本研究では,種々の粒子径(5–120 nm)および表面官能基(なし,アミノ基,カルボキシル基)をもつシリカ粒子の溶血作用を,種々の曝露温度(4–43°C)およびリン酸緩衝生理食塩水(無添加,血清の添加,血清アルブミンの添加)において検討した.具体的には,溶血性試験,赤血球に対する粒子付着数の測定,赤血球の凝集・分散性の評価などを行うことにより,ナノ粒子の溶血作用メカニズムの全体像を明らかにした.
ナノ粒子の最も簡便な細胞毒性試験として,赤血球を用いた溶血性試験が広く用いられている.しかし,ナノ粒子の溶血作用メカニズムは未だによく理解されていない.本研究では,シリカ粒子物性(サイズと表面官能基)および曝露環境(溶液温度とタンパク質の添加)に着目して,赤血球に対する粒子付着数の測定,溶血性試験,および赤血球の凝集・分散性の評価が行われ,シリカ粒子の溶血作用メカニズムの全体像が明らかにされた.
本研究では,位相回復ホログラフィ法による微粒子計測モジュールの開発をおこなった.このモジュールが持つシステムは,2台のカメラが接続されたGPU搭載のシングルボードコンピュータ,グリーンレーザーとビームスプリッタで構成されている.さらにGPUによりリアルタイム再生が可能となっている.また,3次元体積中の静止流体に落下する微粒子の形状と位置を2枚のホログラムとして記録できる.また位相回復ホログラフィによって位相情報欠落による双画像問題を解決できる.さらに,ホログラムの記録と再生についてモジュールの構成要件を理論的に示した.よって,研究室利用に留まっていたホログラフィ計測を粉体生産工程のインライン・オンライン測定で利用できることを示した.
これまでGaborホログラフィによる微粒子計測は,測定原理に起因する双画像問題とオンライン測定が困難になる長い3次元数値計算時間の問題があり,研究室の利用に留まっていた.そこで,GPU (Graphics Processing Unit)搭載シングルボードコンピュータを用いた位相回復ホログラフィ微粒子計測モジュールを開発することで,粉体生産工程のインライン・オンライン測定に利用できることを示した.
粉体の機能化を図るうえで,粉体の構造と機能を分類することは重要であり,その方法の一つとして機械学習が用いられる.機械学習を材料設計に応用するためには分類精度向上に寄与する因子の“見える化”が重要と考え,原因分析が可能なマハラノビス-タグチ(MT)法を用いることを試みた.モデル粉体材料としてカブトムシ三齢幼虫が排出する糞を対象とし,雌雄分類精度向上に寄与する糞形状が糞の表面粗さに関係する因子であることを明らかにした.雌の糞に含まれるバインダー量が雄のそれより優位に多いことを考慮すると,腸内でプレス成形された糞が体外に排出される際に,雌の糞は形を崩しやすいのではないかと推測される.MT法は,粒子の構造と機能の分類においても,いわゆる個体差に類似したばらつきを除外し,分類精度向上を目指す手法としての展開が期待できる.
機械学習を用いた粉体材料の構造と機能の分類には精度向上に寄与する因子の“見える化”が重要である.昆虫の糞を対象とし,マハラノビス-タグチ(MT)法の原因分析を用い,雌雄分類精度向上に寄与する糞形状が表面粗さ由来であることを明らかにした.雌の糞には雄の糞よりバインダー成分が多いため変形しやすいと推測される.MT 法は、個体差によるばらつきを除外し粉体材料の構造と機能の分類精度向上への展開が期待できる.
Si–Si σ結合はC=C π結合と類似の反応性や物性を示す.本研究グループではSi–Si σ結合の柔軟性や芳香族置換基とのσ–π共役を活用し,様々なジシラン架橋マクロサイクルの合成,構造,物性などについて検討している.すでに2量体(テトラシラシクロファン)の合成と温度変化による相転移について検討している.ここでは3量体,4量体のマクロサイクルの合成と温度変化による結晶の外形変化,相転移について報告する.
Si–Si単結合の柔軟性を活用し,3量体,4量体の環状芳香族分子を合成し,温度変化による構造と物性の連動変化と機能性分子への展開について報告しています.
粉体の僅かな変化を機械学習(MT法)で検知する
公開日: 2023/05/25 | 30 巻 p. 58-64
高井 千加
脂質ナノ粒子の形成と形成メカニズムの解明
公開日: 2017/06/10 | 24 巻 p. 74-78
渡慶次 学
第8回アジア粉体工学シンポジウム(APT2021)
公開日: 2022/05/25 | 29 巻 p. 128-131
綿野 哲
多孔性錯体微粒子の粒径・形状制御による吸着機能設計
公開日: 2017/02/03 | 23 巻 p. 173-179
渡邉 哲
高効率な色素増感型太陽電池
公開日: 2017/02/03 | 23 巻 p. 65-69
梅津 信二郎
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら