本研究は,水環境においてナノプラスチックが微生物に及ぼす影響を明らかにし,その制御指針を得ることを目的とした.正帯電ポリスチレンナノ粒子をモデルナノプラスチックとし,生育期の異なる大腸菌(対数増殖期および定常期)を用いて,塩分濃度を変化させた条件下で粒子曝露実験を行った.菌体サイズ,粒子付着量,細胞膜健全性,コロニー形成能力を,フローサイトメーター(FCM)および共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)等により評価した.その結果,低塩分条件では粒子付着が増大し,細胞膜損傷およびコロニー形成能力の低下が顕著であった.一方,高塩分条件では静電遮蔽効果により粒子付着および毒性が抑制された.対数増殖期の大腸菌では粒子付着による毒性が顕著であったのに対し,定常期では毒性が比較的低かった.これらの結果から,曝露環境のみならず微生物の生育状態も,ナノプラスチックの微生物毒性に大きく影響することが示された.
本研究では,水環境中の微生物に対するナノプラスチックの付着・毒性に影響を与える因子として,曝露環境(媒体塩分濃度)だけでなく,微生物の生育状態(対数増殖期・定常期)にも着目した系統的な実験結果が報告されている.対数増殖期の大腸菌では粒子付着による毒性が顕著であるのに対し,定常期の大腸菌では毒性が比較的低いことが明らかにされており,生育状態が毒性発現において重要な役割を果たすことが示されている.
本研究では,光学顕微鏡画像と深層学習(CNN: Convolutional Neural Network)を組み合わせて,製薬用粉体混合物中の成分比率を非破壊で推定する手法を提案する.2成分混合(CEOLUS PH-101とPEARLITOL 200SD)および3成分混合(イブプロフェン,Pharmatose 100M,CEOLUS UF-702)について,VGG16とXceptionのCNNモデルを構築し,それぞれ回帰タスクとして学習させた.Xceptionモデルは,2成分では決定係数R2 = 0.821,3成分ではR2 = 0.935を達成し,いずれも誤差が小さい高精度な予測を示した.さらに,UMAP(Uniform Manifold Approximation and Projection)によって中間層の特徴を可視化したところ,混合比に応じたクラスタ構造(類似したデータがまとまって形成される構造)が明瞭に現れ,モデルが粒子形態の微妙な差異を捉えていることが示された.本手法は,従来のサンプリングや化学分析に頼らない,リアルタイムかつ非破壊の品質管理ツールとして,製薬工程への応用可能性が高い.
本研究では,従来法では迅速かつ非破壊での評価が困難であった医薬品粉体中の賦形剤混合比の推定に対し,光学顕微鏡画像と深層学習を組み合わせた新手法が提案されている.人間の目では捉えにくい微細な粒子特徴をAIが自動抽出することで,高精度な定量評価を実現している点が特筆される.簡便な撮像装置で実装可能であるため,医薬品製造におけるリアルタイム品質保証やプロセス解析への応用が期待される.
本研究では,気相中におけるガス-液-固界面の制御に基づき,ワンステップエアロゾルプロセスによるコアシェル粒子の簡便な気相合成法を提案した.本手法により,金属粒子をコアとするコアシェル構造の形成が可能であることを示した.前駆体濃度および水素ガス流量の制御により,粒子の形態,粒径,ならびに結晶構造を精密に調整できることを明らかにした.合成過程では,Fe,FeO,SiO2各相の生成・還元挙動のバランスを最適化することで,安定なシリカ被覆層の形成を実現した.前駆体濃度の増加に伴いコアのサイズは増大し,SiO2シェルは薄くなる傾向を示し,その挙動は理論的予測と良好に一致した.また,粉末X線回折から,不純物酸化物の生成を抑制し金属への完全な還元を達成するためには,十分な水素供給が不可欠であることが明らかとなった.得られたコアシェル粒子は,均一な球状形態と明瞭なコアシェル構造を有しており,本手法における気相合成での界面制御の有効性を実証した.
本研究では,気液固界面の制御に基づくワンステップエアロゾルプロセスによって,金属鉄をコアとするFe@SiO₂コアシェル粒子を合成する手法が提案されている.前駆体濃度の調整により粒径(475〜710 nm)およびシリカ被覆層の厚さ(29〜13 nm)を制御できることが示されるとともに,水素と前駆体のモル比が金属鉄への完全還元を達成する上で決定的に重要であることが明らかにされた.磁性材料への応用に向けた有望な合成プロセスとして位置づけられる.
本研究では,イオン誘起核生成を利用したガス成分分離プロセスの可能性について検討した.イオン誘起核生成は,イオンを核として分子が凝集・成長する不均一核生成過程であり,均一核生成と比べて低い過飽和条件でも進行し得る.本研究ではまず,蒸気分子のイオン表面への吸着・脱着過程を待ち行列理論に基づいてモデル化し,分子動力学シミュレーションから得られた蒸気到着間隔および滞在時間分布との比較を行った.その結果,低蒸気圧条件では理論モデルとの良好な一致が確認された.次に,CO2–N2混合気体中に単一のアンモニウムイオンを導入した分子シミュレーションを実施し,イオンを核としたナノクラスター形成挙動を解析した.その結果,均一核生成が起こらない条件下においても,イオン誘起核生成によりCO2ナノクラスターが形成・成長することを確認した.本研究の結果は,音速流ノズル分離と組み合わせた分離技術への応用可能性を示唆するものである.
本研究では,気相中のイオンを核として分子が集積するイオン誘起核生成に着目し,その基礎過程が確率モデル(待ち行列理論)および分子動力学計算によって検討されている.分子の吸着・脱着ダイナミクスや単一イオン周囲における初期クラスター形成を分子レベルで解析した結果,イオンが気相中の分子集積を促す起点となり得ることが示された.本成果は,将来的なガス成分分離や浄化プロセスの設計に向けた重要な基礎的知見を提供するものである.
Al微粒子を回転するバレル内に入れて電解エッチングを行うことで,表面にエッチングピットが形成されたポーラスAl微粒子が作製された.本手法では,Al微粒子は,バレル底部に設置されたPt板に接触することで通電され,その表面で電解エッチングが進行する.Al微粒子表面に形成されるエッチングピットの構造は,電流値や電解時間によって制御することが可能であった.また,界面活性剤を添加した電解液を用いれば,5 μm以下のAl微粒子の表面にエッチングピットを形成することも可能であった.出発材料にMg微粒子を用いてバレル電解エッチングを行えば,ポーラスMg微粒子の作製も可能であった.本手法で得られたポーラス微粒子は,センサー,触媒担体,バッテリーなど様々な応用が期待できる.
本研究では,表面に多孔質構造を有するAlおよびMg微粒子を効率的に作製するための手法が報告されている.電気化学プロセスを採用することで多孔質構造の形成が可能となり,通電量の調整によって細孔深さを精密に制御できることも実証されている.本手法で作製された多孔性微粒子は,センサーやバッテリーをはじめとする多様な分野への応用が期待される.
事業内容と実施状況の概要
公開日: 2024/05/31 | 31 巻 p. 3-15
焼解によるセラミックスコンデンサからの粉体再生技術
公開日: 2026/05/27 | 33 巻 p. 55-58
瀬川 浩代
先進セラミックスの粉体プロセスに関する第2回国際シンポジウム
公開日: 2024/05/31 | 31 巻 p. 224-227
多々見 純一
微小プラスチックの環境微生物毒性の評価とその制御
公開日: 2026/05/27 | 33 巻 p. 46-49
新戸 浩幸
アップコンバージョン発光ナノ結晶の環境調和型育成
公開日: 2017/12/29 | 17 巻 p. 61-66
手嶋 勝弥
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら