園芸学研究
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土壌管理・施肥・灌水
メタン発酵消化液を用いる灌水同時施肥装置の改良とキュウリへの施用効果
芳野 未央子佐藤 達雄アニ ウィディアストゥティ加藤 亮井上 栄一岩田 将英福司 健治岩下 幸司渡辺 史生
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2012 年 11 巻 1 号 p. 29-35

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抄録
メタン発酵消化液(消化液)は肥料として有用な窒素成分を含むが,不溶性成分も含み粘稠性が高いため,簡便,均一に施用することが難しく,施設園芸分野での利用は進んでいない.そこで,スクリーンフィルターを改造して不溶性成分を除去する濾過装置と,水圧を利用して灌水に消化液を混入する施肥装置を試作し,雨よけキュウリの灌水同時施肥栽培での適用を試みた.期間ごとの消化液の施用量は,葉数に基づく窒素施肥指標により調節した.対照として,尿素施用区を設けた.その結果,試作装置により消化液の物性の問題は改善され,作期を通して詰まりの問題もなく,灌水同時施肥栽培が可能であった.葉数の推移,施肥量,収量についても,処理間で明らかな差は認められなかった.施用した消化液は速やかに分解,硝化され,肥料としてキュウリに吸収されたものと考えられた.これらのことから,施用を適切に行うことができれば,本消化液は尿素と同等の肥効を持つ窒素肥料として利用可能であることが示唆された.
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© 2012 園芸学会
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