抄録
これまで我々は,TDR計を用いた枝内水分(Rrev)の測定方法の開発を行ってきた.しかし,水分ストレスを付与したときのRrevと果実品質の関係は明らかでない.そこで,ウンシュウミカンおよび‘不知火’を用いてそれらの関係を明らかにし,併せて水分ストレスに対する果実品質の影響を時期別に検証した.その結果,ウンシュウミカンにおいて,Rrevの積算水分ストレス(Sθ)と7~9月の増糖量および肥大量との間に相関がみられた.また,‘不知火’のSθは,8~9月の増糖量および肥大量との間に高い相関があった.Sθは,葉内最大水ポテンシャルの積算水分ストレス(Sψ)とほぼ同程度の精度であったことから,水管理に有用な技術であることが確認された.また,ウンシュウミカンの果実品質に対する水分ストレスの影響については,果実の発育期間全般にわたりストレスが増糖および肥大の低下に影響することが認められ,減酸の遅延は9月以降におけるストレスの影響が大きいことが明らかになった.また,‘不知火’については,8~9月の水分ストレスで増糖効果が高く,秋季の水分ストレスは減酸を遅延させ,果実肥大期の水分ストレスは肥大を低下させることが明らかになった.