園芸学研究
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育種・遺伝資源
交雑育種における近交係数と平均親値によるニホンナシの子の果重の家系平均値の推定
長澤 正士原 加寿子柴田 雄喜小野 早人
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2017 年 16 巻 3 号 p. 259-264

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抄録

秋田県果樹試験場天王分場で1991~1998年に交雑された正逆交雑を区別した26家系の各6つの子(合計156の子)の果重の2006~2009年の4年間のうちいずれか1年の調査データを場内に植栽されている17品種について各1樹から10果を採取し5年間(2003年,2006~2009年)の平均値により年次補正し,果重の解析を行った.その結果,平均親値をX,近交係数をF,子の家系平均値をYFとすると重回帰式(YF = 0.9902 + 0.6263X – 0.7343F)が得られ,平均親値除去後の近交係数および近交係数除去後の平均親値はともに1%水準で有意であった.

次に,平均親値と近交係数から子の家系平均値をこの重回帰式で予測し,それを平均値として子の遺伝子型値が家系内遺伝分散と回帰では説明できない分散の和で正規分布するモデルにより①早生種を想定し,平均親値300 gの家系から果重350 g以上,②中晩生種を想定し,平均親値500 gの家系から果重500 g以上の子の出現率を推定した.①については,近交係数(F) = 0.1094の時23.6%,F = 0.3438の時1.3%であった.②については,F = 0.1094の時19.5%,F = 0.3438の時0.9%であった.

本検討の結果,少なくとも果重が育種目標となっている場合は,平均親値だけではなく近交係数を考慮した交雑を行う必要があると考えられた.

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