2020 年 19 巻 1 号 p. 13-19
積雪期間の生育と可溶性炭水化物蓄積の品種間差と融雪後の生存率について調査し,その関係を検討した.タマネギの融雪後の生存率には品種間差が認められ‘ターザン’の生存率が最も高く,品種によって耐雪性が異なると考えられた.融雪後の生存率と積雪始期から融雪後にかけての植物体の大きさに関係は認められなかった.すべての品種で,積雪始期の葉鞘の可溶性炭水化物含量は葉身の約2倍であった.また,葉鞘が葉身より重合度が高いフルクタンを蓄積していた.すべての品種の葉身・葉鞘では,積雪始期から積雪下,融雪後にかけて可溶性炭水化物含量が低下していた.融雪後の葉鞘のケストース含量には品種間差が認められ,‘ターザン’が高かった.フルクタンは融雪後の植物体の生存と成長に使用されることが示唆され,融雪後の葉鞘にフルクタンが残存していることが融雪後の生存に重要と考えられる.また,積雪条件下で可溶性炭水化物の消費が少ないことが,融雪後のフルクタン残存量に影響しており,耐雪性と関係すると示唆される.積雪期間中の可溶性炭水化物消費が少なく,融雪後にフルクタンが残存する ‘ターザン’ は耐雪性が高く,積雪地帯の秋まき作型に適した品種であると判断できる.