抄録
キャベツセル成型苗の生育と品質の均一化を目的として,定植前の5日間0.3%濃度にNaClを添加した液肥(園試処方標準培養液1/5培液)を底面給水する処理(NaCl処理)が根鉢水分の均一性,苗の蒸散特性ならびに苗群落における草丈に及ぼす影響について検討した.
1.根鉢の含水率が45%以下になると,地上部の水ポテンシャルが低下し,苗が萎れた.
2.灌水後1日経過したときのNaCl処理区の根鉢の含水率は,対照区よりも高く保たれ,根鉢の水分むらが小さくなった.
3.セル成型育苗では,苗周辺の相対湿度がトレイの中央部で外縁部よりも約15%高かった.
4.NaCl処理により苗の蒸散速度は減少し,トレイ中央部と外縁部の苗の蒸散速度の較差が減少した.
5.NaCl処理によってキャベツセル成型苗群落の中央部の徒長が抑制された.
以上の結果から,NaCl処理による根鉢水分の斉一性の維持は,苗の生育・品質の斉一性の向上を図る上で有効な技術になるものと考えられる.