2021 年 20 巻 4 号 p. 455-461
和歌山県産渋ガキ3品種 ‘刀根早生’,‘平核無’ ‘中谷早生’ の海上輸送による米国などへの輸出に向けた軟化抑制技術として,防湿段ボールでの最適輸送温度および1-MCP処理の効果を検討した.また,‘刀根早生’ ではMA(Modified Atmosphere)包装の効果についても検討した.概して,‘刀根早生’ の果実軟化は25°Cから0°Cまで低温ほど抑制された.ただし,5°Cおよび10°Cでは保持期間の延長に伴って低温障害の兆候が見られた.1-MCPの軟化抑制効果は,25°Cおよび20°Cで処理後2週間,15°Cおよび10°Cでは処理3週間,5°Cでは処理後4週間程度であった.0°Cでは処理後4週間保持し25°C移行後1週間程度軟化が抑制された.ポリエチレン袋によるMA包装も低温環境では明確な軟化抑制効果を示した.ただし,1-MCP処理と併用しても相加的な効果はごくわずかであった.0°Cで4週間保持し25°Cに移行した ‘中谷早生’ では1-MCP処理した果実も移行直後から軟化の進行が認められた.‘平核無’ では,1-MCP処理の有無にかかわらず,25°C移行後10日程度,軟化果実は発生しなかった.
以上のことから,北米地域への約1か月と想定される海上輸送における最適温度は0°Cであり①‘中谷早生’ では脱渋時の1-MCP処理のみでは輸送後の商品性を維持することが困難であること②‘刀根早生’ では1-MCP処理またはMA包装により輸送後の商品性を7日以上維持できること③‘平核無’ は1-MCP処理をしていなくても,輸送後の商品性を10日程度維持できることが示唆された.