2022 年 21 巻 4 号 p. 459-466
冬季積雪地域である富山県砺波市および新潟県上越市で秋播き移植栽培したタマネギ ‘ターザン’ の抽苔株率データを用い,抽苔株率推定モデルについて検討した.タマネギの花芽形成に関する温度反応を積算したVD値,または日々の温度反応と葉数との積を積算したVDLN値について,積算期間を変えて抽苔株率との近似曲線への非線形回帰における決定係数を調査した.VDについては,いずれもの場合も決定係数が低く抽苔株率を高精度に推定することはできなかった.一方,植物体の大きさを加味したVDLNの決定係数については,砺波と上越の全データを用いた場合,1月20日まで,または移植後80日間の積算で0.75以上,砺波のデータのみを用いた場合は2月20日以降または移植後120日以降までの積算で概ね0.95以上と高かった.よって,VDLNを用いるモデルの有効性が示唆された.実用的な指標として,砺波において移植後140日までのVDLN > 490が ‘ターザン’ の抽苔可能性の目安として示された.