園芸学研究
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栽培管理・作型
耐水性台木を用いたキウイフルーツの湛液型非流動水耕における培養液条件の検討
別府 賢治白川 結貴大野 健太朗片岡 郁雄
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2024 年 23 巻 3 号 p. 195-203

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抄録

キウイフルーツの湛液式非流動水耕における培養液の好適条件を明らかにすることを目的として,培養液の濃度,pH調整の有無,冷却がA. macrosperma台のキウイフルーツ幼木の栄養成長に及ぼす影響を調査した.実験1では,培養液の肥料濃度が‘ヘイワード’の生育に及ぼす影響を調査した.OATハウス肥料の濃度を,標準液の1倍,1/2倍,1/4倍とする区を設けて,5月下旬から7月中旬まで栽培した.補水量は1/4倍区と1/2倍区で1倍区よりも大きかった.1/2倍区や1/4倍区では新梢長や節数の増加量が1倍区よりも顕著に大きく,葉の光合成速度や蒸散速度も大きかった.実験2では,培養液のpH調整の有無が‘香川UP-キ2号’の生育に及ぼす影響を調査した.6月下旬から7月下旬まで,pH調整区では1日もしくは2日ごとにpHを6.0に調整したが,pH無調整区ではpH調整を全く行わなかった.pH調整区とpH無調整区で,補水量,新梢の生育および葉の光合成速度に大きな差異はみられなかった.実験3では,夏季における培養液の冷却が生育に及ぼす影響を調査した.処理区として,培養液を25°Cに冷却する区と対照区を設けた.2020年の実験では,‘香川UP-キ5号’を用いて,7月下旬から9月上旬まで培養液を冷却した.2021年の実験では,‘香川UP-キ3号’を用いて,7月上旬から9月上旬まで冷却した.2020年は2021年に比べて8月の気温が2.6°C高かった.2020年の実験では,冷却区で対照区に比べて新梢成長が著しく優れ,補水量も大きかった.2021年の実験では新梢成長や葉の光合成速度に処理間の差異はほとんどみられなかった.以上の結果から,耐水性の強い台木を用いたキウイフルーツの湛水式非流動水耕において,培養液の肥料濃度は標準液の1/2倍または1/4倍が適していること,1,2日ごとに培養液のpHを6.0に調整しても,無調整に比べて生育はほとんど変わらないこと,高温年には培養液冷却により生育が優れることが示された.今後,成木を用いて果実発育に適する培養液条件の検討を行う必要がある.

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