2026 年 25 巻 2 号 p. 91-100
尻腐れ(BER)は,果菜類などに発生する生理障害の1つであり,果実の急速肥大期に集中して発生し,果実肥大速度,アポプラスト水溶性カルシウム(Ca)含量,活性酸素,抗酸化酵素活性および抗酸化物質含量などが関連しているとされている.一方,カラーピーマン‘パプリ娘’において,開花時の植物ホルモン(PGR)処理によって高い着果率で受粉果とほぼ同程度の単為結果果実が得られ,BER発生が少ないことが示されている.そこで本研究では,BER発生機作に関する知見を得るために,カラーピーマン‘パプリ娘’を供試し,PGR処理誘導単為結果(無種子)と受粉果(有種子)について,果頂部組織中のアスコルビン酸(AsA)含量,水溶性Ca含量,カタラーゼ(CAT),アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)およびスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の活性を比較した.BER発生率は,有種子果の方が無種子果より高くなった.開花後21日目までの肥大率に差は認められなかった.BER発生前の有種子果と無種子果で,AsA含量,水溶性Ca含量に有意差はなかった.開花後14日目においてCAT,APXおよびSOD活性が高くなり,特にCAT活性は開花後21日目以降も継続して高く維持された.これらの結果から,PGR処理誘導単為結果でBERの発生が抑制される要因として,肥大初期におけるCAT,APXおよびSOD活性の上昇や,肥大期間中のCATの継続的な高い活性が関連している可能性が示唆された.