2004 年 3 巻 4 号 p. 367-371
開花時期の異なるエゾ系リンドウ3系統とササ系リンドウ1系統を供試し,展葉期と休眠期の茎頂培養個体の花らい形成について検討した.次いで,節培養に及ぼす花らいの有無,節位,あるいはNAAとホルクロルフェニュロン添加の影響を調査し,花らい形成個体の増殖の可能性を検討した.
展葉期および休眠期由来の培養個体において,培養期間が105日間では花らい形成率は低く,特に越冬芽を用いると全系統で6%以下となった.培養期間が165日間に延びると,展葉期由来の個体の花芽形成率はいずれの系統でも50%以上となったが,休眠期由来の個体では,エゾ系リンドウでは全く花らいがみられなかった.節培養において植物成長調整剤を与えない場合,花らい有個体上位節での草丈と発根数は,花らい無個体に比べて大きく劣った.しかし,下位節由来の個体の成長は,花らい有個体由来の方がむしろ優れていたので,花らいを形成しても,下位節を用いることで増殖は可能であると考えられた.NAAとホルクロルフェニュロンの添加によって,置床したすべての節でカルスが形成され,そこから多数のシュートが発生した.発生シュート数は花らい無個体由来で多かったが,花らい有個体由来からのシュート数も,頂部節で8.6本に達した.草丈も花らいの有無や節位による有意差は無く,得られたシュートは十分に増殖個体として利用し得ることが示された.