園芸学研究
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3 巻, 4 号
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総説
原著論文
育種・遺伝資源
  • 稲富 佳洋, 村田 奈芳, 中野 英樹, 田村 春人, 鈴木 卓, 大澤 勝次
    2004 年 3 巻 4 号 p. 329-332
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    北海道を中心に28の生息地から採取し,栄養繁殖により増殖し,札幌で生育させたギョウジャニンニクについて,萌芽期の早晩性の系統間差を明らかにした.草丈は,系統を比較する上で萌芽期の指標として有効である.2000年から2001年にかけての2年間の調査から,萌芽期の早晩性は安定した遺伝形質にあることがわかり,早晩性に基づき系統を3グループに分類することができた.RAPD分析による系統分類は,20種類の異なるプライマーを用いて成功した.検出されたバンドの数から遺伝的距離を算出し,28系統を大きく6群に分けることができた.萌芽期の早晩性およびRAPDという異なる指標によって独立に得られた二つの分類に関連は認められなかったが,どちらも同一市町村内の異なる生息地から採取した系統の遺伝的距離が近いことを示していた.系統間の萌芽期の違いを明らかにしたことは,ギョウジャニンニクの新品種育成に有効である.
  • 石 嶺, 田中 彰, 田中 常雄, 佐藤 孝夫, 鈴木 卓, 大澤 勝次
    2004 年 3 巻 4 号 p. 333-338
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    サンザシ属(Crataegus)果樹を改良する上で基礎となる知見を得ることを目的とし,東アジア原産のオオミサンザシ(C. pinnatifida),ダフリカサンザシ(C. dahurica)およびアラゲアカサンザシ(C. maximowiczii)の果実内化学成分を調査した.サンザシ果実には,高濃度でβ-カロテン(1.9~3.0 mg/100 gFW)が含まれており,この値は主要果樹のそれよりも高い値であった.有機酸としてシュウ酸(103.9~116.1 mg/100 gFW)が検出されたことは,サンザシ果実の特徴である.アラゲアカサンザシ果実のα-トコフェロール(2.22 mg/100 gFW),クエン酸(426.3 mg/100 gFW),アントシアニン(283.1 mg/100 gFW)および総ポリフェノール(769.0 mg/100 gFW)含量は,他種と比べ著しく高かった.アラゲアカサンザシは,高機能サンザシの育種母本として,有用と考えられる.
  • 八幡 茂木, 佐藤 三郎, 小原 均, 松井 弘之
    2004 年 3 巻 4 号 p. 339-344
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    三倍体ビワを利用した無種子品種育成のための育種材料となる四倍体ビワの作出を,アミプロホスメチル(APM)およびコルヒチンの2薬剤を用いて,いくつかの処理方法により試みた.その結果,APMの処理により4個体,コルヒチンの処理により2個体の四倍体を得た.
    1.‘楠’実生の長さ3~10 cmに達した新梢先端部に対する0.005%APMの14日間の浸漬処理および0.2%コルヒチンの14日間の浸漬処理,2%の4日間の浸漬処理により四倍体をそれぞれ1個体得た.
    2.‘富房’成木の発芽・伸長期の新梢先端部に対する0.005%APMの14日間の浸漬処理により四倍体を1個体得た.
    3.幼根の長さが3~4 cmの‘楠’発根種子の根に対する0.005%APMの14日間の浸漬処理により,四倍体を1個体得た.
    4.2週間APM無添加MS培地で馴化培養した23~24年生‘楠’成木の新梢茎頂組織を0.005%APMを含むMS培地に移植し,7日間処理することにより四倍体を1個体得た.
  • 深井 誠一, 上ヶ市 洋子, 野崎 香樹
    2004 年 3 巻 4 号 p. 345-348
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    四倍性ナカガワノギクと八倍性ナカガワノギクを用いて正逆交配を行い,得られた後代の形質と倍数性を調査した.四倍性系統同士は交配親和性であるが,八倍性系統同士では実生が得られなかった.さらに倍数性の異なる交配では交配親和性が低いことが明かとなった.得られた後代の倍数性は,ほぼ両親の中間であったが,非還元性の配偶子由来と推定される染色体数の増加も見られた.得られた六倍性系統は旺盛に生育し,一部の組み合せの中から雄性不稔の形質を持つ植物が出現した.
  • 中村 ゆり, 梅宮 善章, 増田 欣也, 井上 博道, 藤井 義晴, 森口 卓哉
    2004 年 3 巻 4 号 p. 349-354
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    グルカナーゼまたはキチナーゼ遺伝子を導入したキウイフルーツ組換え体と非組換え体とのアレロパシー物質の生産性の差異および土壌微生物相に対する影響について調査を行った.今回の調査ではどちらにも差異は認められず,これら組換え体が土壌環境に及ぼす影響においては,非組換え体と実質的に差はないと考えられた.
繁殖・育苗
  • 古谷 博, 細木 高志
    2004 年 3 巻 4 号 p. 355-360
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    タラノキ(Aralia elata Seemann)において安定した不定胚経由の植物体再生系を確立するため,in vitro幼植物体由来根組織切片からのカルス,不定芽および不定胚形成に及ぼす2,4-Dの影響について検討した.MS培地を基本とし,2,4-Dを添加した培地に根組織切片を外植体として置床した.25 ℃,暗黒下で30日間培養後,形成したカルスを2,4-Dフリー培地に移植し,その後は3,000 lx,16時間日長下で継代培養し,以下の結果が得られた.
    1.外植体からのカルス形成は,2,4-Dを0.05 mg/l以上添加した区で80 %以上,カルスからの不定胚形成は0.5 mg/l以上添加した区で45~100 %認められた.
    2.高率に不定胚を誘導するためには,外植体の2,4-D添加培地での培養期間は25日間以上必要であった.
    3.形成したカルスを,2,4-Dフリー培地に移植して20~30日間隔で継代培養を行うと,不定芽および不定胚が形成され,多数の再生植物が得られた.
    4.2,4-Dフリー培地で継代培養後に誘導したECを,2,4-D 0.01~0.05 mg/l添加培地に移植すると幼植物体に発育するとともにその表面に不定胚が形成され,幼植物体は増加した.
    5.再生した幼植物体は,バーミキュライトで順化後,花崗岩風化土壌とパーク堆肥混合用土に鉢上げすると,45日後には圃場へ定植可能な苗木となった.
  • 古谷 博, 細木 高志
    2004 年 3 巻 4 号 p. 361-366
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    組織培養によるアシタバ(Angelica keiskei)の増殖技術を確立するために,葉柄切片および再生植物の根組織切片からの不定芽,不定胚誘導および植物体再生について検討した.
    葉柄培養は,未展開葉基部の横断切片を外植体として用い,1~2 mg/l 2,4-Dと0,0.01および0.1 mg/l BAを組み合わせて添加したMS培地に置床し,25℃,3,000 lx,16時間照明下で行った.外植体から形成したカルスは,植物生長調節物質を添加しないMS培地へ移植して継代培養を行うと不定芽が形成し,外植体あたり4~10個の再生植物が得られた.
    次に,再生植物の根組織切片を外植体として用い,2,4-DとBAを添加したMS
    培地に置床し,25℃の暗黒条件下で培養した.外植体からの不定胚誘導は2,4-Dを0.5 mg/l以上添加した区で認められ,1~2 mg/l 2,4-D単独添加区および0.01,0.1 mg/l BA併用添加区ではいずれも100%の不定胚形成率であった.従って,不定胚形成にはBAの影響は少ないものと推察された.不定胚は,植物生長調節物質を添加しないMS培地に移植して継代培養を行えば幼植物体に生育した.なお,順化後,ポット植えした再生植物は,45日後には新葉が現れ生育は旺盛であった.
    このことから,アシタバの組織培養による増殖は,葉柄培養による不定芽形成よりもin vitro培養体の根組織切片培養による不定胚誘導の方が増殖効率が良いことが明らかとなった.
  • 鈴木 誉子, 菅家 文左衛門, 金浜 耕基, 金山 喜則
    2004 年 3 巻 4 号 p. 367-371
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    開花時期の異なるエゾ系リンドウ3系統とササ系リンドウ1系統を供試し,展葉期と休眠期の茎頂培養個体の花らい形成について検討した.次いで,節培養に及ぼす花らいの有無,節位,あるいはNAAとホルクロルフェニュロン添加の影響を調査し,花らい形成個体の増殖の可能性を検討した.
    展葉期および休眠期由来の培養個体において,培養期間が105日間では花らい形成率は低く,特に越冬芽を用いると全系統で6%以下となった.培養期間が165日間に延びると,展葉期由来の個体の花芽形成率はいずれの系統でも50%以上となったが,休眠期由来の個体では,エゾ系リンドウでは全く花らいがみられなかった.節培養において植物成長調整剤を与えない場合,花らい有個体上位節での草丈と発根数は,花らい無個体に比べて大きく劣った.しかし,下位節由来の個体の成長は,花らい有個体由来の方がむしろ優れていたので,花らいを形成しても,下位節を用いることで増殖は可能であると考えられた.NAAとホルクロルフェニュロンの添加によって,置床したすべての節でカルスが形成され,そこから多数のシュートが発生した.発生シュート数は花らい無個体由来で多かったが,花らい有個体由来からのシュート数も,頂部節で8.6本に達した.草丈も花らいの有無や節位による有意差は無く,得られたシュートは十分に増殖個体として利用し得ることが示された.
土壌管理・施肥・灌水
  • 白木 己歳, 深田 直彦
    2004 年 3 巻 4 号 p. 377-380
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    膨軟な土壌の慣行栽培に対し,土壌緻密度が山中式硬度計で,20~24 mmあるいは25~28 mmと高い二つの栽培床を設け,トマトとキュウリの施設栽培を検討した.
    土壌緻密度が高い条件で慣行栽培並の草勢を得るには,20~24 mmの栽培床では慣行栽培と同じでよかったが,25~28 mmの栽培床では栽培初期だけ,灌水回数の上積みと慣行栽培では不要な数回の液肥施用を必要とした.
    土壌緻密度の上昇にともなって,キュウリは総収量も上物収量も増加し,トマトは上物収量が増加した.
    土壌緻密度の高い区では,気相率の低下が著しく,25~28 mmの栽培床では10 %以下であった.また,この栽培床の跡地土壌は,交換性塩基とCECの数値が高かった.
    収穫を終了したトマトの根の状態を調べた結果,緻密度の高い区ほど,採取できる根量が少なかった.根の分布している場所は各区とも上層ほど多い傾向があり,土層の緻密度との関係は認められなかった.
    土壌緻密度を高める栽培は,畦を立てないため,作畦用機械が不用で,圃場内の作業性も向上する利点があった.
栽培管理・作型
  • 村谷 恵子, 田村 史人
    2004 年 3 巻 4 号 p. 381-386
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    養液栽培した12月加温作型ブドウ‘マスカット・オブ・アレキサンドリア’を用いて,夏季せん定および夏季の施肥量が肥料成分の吸収および夏季に再伸長した新梢の生長に及ぼす影響を検討した.
    夏季せん定区での枝の伸長時期は慣行区よりやや遅れた.窒素,リン酸およびカリウムの吸収時期は,慣行区よりもやや遅れたが,夏季の総吸収量には差が認められなかった.夏季せん定区の結果母枝当たり葉面積およびLAIは慣行区よりも小さくなった.9月における葉内リン酸濃度は夏季せん定区より慣行区でやや高かった.しかし,窒素およびカリウムの濃度は夏季せん定により影響されなかった.
    夏季の施肥量が少ない5 gN・m−2区(以下5 g区)では,6月~9月に吸収した窒素量が少なく,施肥量の多い15 g区では窒素吸収率(施肥窒素に対する吸収窒素量の割合)がやや低かった.施肥量が異なっても結果母枝当たり葉面積およびLAIの差は小さかった.9月における葉内の窒素およびカリウム濃度は明らかに施肥量の影響を受け,窒素は5 g区で濃度が低く,カリウムは15 g区で高かった.
  • 猪俣 雄司, 工藤 和典, 和田 雅人, 増田 哲男, 別所 英男, 鈴木 邦彦
    2004 年 3 巻 4 号 p. 387-392
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    マルバカイドウに接ぎ木したカラムナータイプ‘メイポール’を用い,7年生までの樹体生育,果実生産力,乾物生産特性に及ぼす整枝法の影響を比較検討した.
    Y字形法は1本主枝法と比べて,樹冠幅の拡大が速く,花芽着生数,新しょう本数および総伸長量,側枝本数も多かった.樹高は,1本主枝法の方が高かった.
    果実,葉,新しょう,新しょう以外枝の最大分布位置は,1本主枝法では樹齢の増加にしたがって樹冠上部に移行したのに対し,Y字形法では5年生以降が200 cm前後の部位で一定となった.
    樹当たり収量は5年生まで差がなく,6および7年生はY字形法で多かった.土地面積当たり累積収量は1本主枝法で多かったが,6年生以降差が縮まった.平均果実重は,5年間のうち3年間でY字形法で重かった.
    高さごとの相対光量子量は,樹齢の増加とともに樹冠中・下部で低下したが,その程度は,1本主枝法で著しかった.高さごとの葉面積は,6年生以降,地表200 cm前後の部位で1本主枝方よりY字形法で多かった.
    7年生の総葉面積は,1本主枝法で10.3 m2,Y字形法で14.5 cm2だった.葉面積指数は1本主枝法で高く11.8,Y字形法で7.6だった.比葉面積は,新しょう葉では差はなかったが,新しょう以外葉はY字形法で低かった.
    7年生の年間乾物生産量は,1本主枝法で約3.3 kg,Y字形法で約5.6 kgだった.器官別分配率に明確な差はなかった.葉の乾物生産能および果実生産能は,1本主枝法でそれぞれ3.67,0.56,Y字形法で3.97,0.77となり,Y字形法で高かった.
    したがって,カラムナータイプリンゴを用いた省力,高品質果実生産には,Y字形整枝の方が適していると考えられた.
  • 成 鈺厚, 荒川 修, 澤田 信一
    2004 年 3 巻 4 号 p. 393-398
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    鉢植えのリンゴ幼樹を用いて,シンク・リミット状態における光合成速度低下の機構について解析した.3日間の連続明期(CL)処理によって,光合成速度は38%,気孔コンダクタンスは58%,細胞間隔CO2濃度は9%,それぞれ低下した.同時に葉内デンプン含量は対照樹の2.8倍に増加した.従って,CL処理によって,リンゴ幼樹はシンク・リミット状態になった.しかし,その後の1日の連続暗期(CD)処理によって,光合成速度,気孔コンダクタンス及び細胞間隔CO2濃度はほぼ回復した.同時に,葉内デンプン含量は大きく減少し,対照樹とほぼ同じになった.従ってその後のCD処理によって,リンゴ幼樹はシンク・リミット状態から解除された.3日間CL処理した樹における光合成A-Ci曲線の初期勾配は対照樹に比べて17%低下した.その後の1日CD処理により,A-Ci曲線の初期勾配は完全に回復した.しかし,3日間CL処理した樹のRuBPcase活性及び量はあまり変化しなかった.これらの結果より,CL処理によってシンク・リミット状態に置かれたリンゴ幼樹の光合成速度の低下,すなわち,カルボキシレーション効率の低下は,RuBPcase活性の低下よりは,むしろ気孔開度の低下に起因していたことが推察される.
  • 西沢 隆, 伊藤 彩香, 伊藤 政憲
    2004 年 3 巻 4 号 p. 399-403
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    ‘早田瓜’の生長,形態および生理的特性をメロン‘プリンス’と比較し,以下の諸点を明らかにした.
    1.子づるの伸長は‘プリンス’よりやや劣り,葉は逆により大きくなる.
    2.クロロフィル含量は‘プリンス’よりやや少ないが,光合成速度は‘プリンス’と同程度である.
    3.雄花両性花同株型である.
    4.果実は球形ないしやや横長の扁球となる.
    5.心皮数は5枚のものが70%以上を占める.
    6.可食部の割合は‘プリンス’より少ない.
    7.‘プリンス’に比べ種子が小さく逆に種子数は多い.
    8.‘プリンス’に比べフルクトース濃度が低い.
  • 杉浦 広幸
    2004 年 3 巻 4 号 p. 405-408
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    大輪ギク栽培において,頂花らいを喪失して側花らいを活用する場合の花首の修正方法を検討した.7月に発らいした‘深志の匠’は,頂花を除去すると,側枝が伸長生長したのちに開花した.頂花を除去した株の側花らいの花首は,無処理区が24.5~34.2°の傾斜角度であったが,側花来基部の葉節組織と頂花跡組織の両方を除去した区では9.1~15.2°に傾斜角度が減少した.葉節組織と頂花跡組織の両方を除去した方が,どちらか一方を除去した場合より傾きが小さくなった.‘窓辺’と‘精雲’において,発らい2~3日後に葉節組織と頂花跡組織の両組織除去した場合と発らい5~6日後に同処理した場合の間に側花らいの花首の傾斜に有意な差はみられなかった.
    以上より,大輪ギクの側花らいの花首傾斜は,側花らい基部の葉節組織と頂花跡組織を削ることにより,修正が可能であった.
発育制御
  • 高松 善博, 北川 智浩, 竹林 晃男, 宇都宮 直樹
    2004 年 3 巻 4 号 p. 409-413
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    ウメ‘南高’17年生樹において,1998年5月13日から翌年の1月中旬まで,短果枝(10 cm以下),中果枝(10~30 cm),長果枝(30~60 cm),徒長枝(60 cm以上)の中央部におけるえき芽の内部形態の変化を2週間ごとに走査型電子顕微鏡で観察した.また,5月13日に採取した徒長枝においては,その上部の展葉直後の葉位前後のえき芽の内部形態の観察も行った.
    展葉直後および未展開葉の葉えきでは,中央部に大きな生長点と幅が広く先端に切れ込みのあるりん片から成る組織とその両側に生長点とやや細長いりん片から成る組織とが1個ずつ形成されていた.この中央部の組織は主芽となり,両側の2つの組織は副芽へと発達した.どの種類の枝においても,8月上旬までは副芽において形態的な変化が見られなかった.しかし,8月下旬には副芽の生長点が平たくなり,9月上旬になるとがく片が形成された.この時期になると副芽は主芽よりも大きくなり,両者を肉眼で明瞭に区別することができた.花器形成は停止することなく急速に進行し12月には胚珠組織が形成された.一方,主芽は12月上旬まで大きさおよび内部形態にはほとんど変化が見られなかった.これらの結果から,ウメ‘南高’では早期から葉えきで副芽が形成され,8月中旬頃からその副芽において花芽形成が開始し,主芽と副芽の発達様式は全く異なることが明らかになった.
  • 兼田 朋子, 馬場 正, 大坪 孝之, 池田 富喜夫
    2004 年 3 巻 4 号 p. 415-419
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    ゴレンシのシュウ酸含有量の葉および果実における品種間差異および生育ステージによる違いを明らかにした.また,ゴレンシにおける主要なシュウ酸生合成経路を明らかにする目的で,グリオキシル酸酸化酵素およびアスコルビン酸酸化酵素の活性を測定した.
    (1) 葉における全シュウ酸,不溶性シュウ酸および可溶性シュウ酸含有量は,酸味系品種が高い値を示し,生育ステージの進行とともに増加し,酸味系品種では可溶性シュウ酸,甘味系品種では不溶性シュウ酸含有量の全シュウ酸含有量に対する割合が特に増加した.一方,果実では,両品種とも生育ステージの進行とともに減少し,また全シュウ酸に占める可溶性シュウ酸の割合が酸味系品種で顕著に高かった.甘味系と酸味系品種を類別する食味上の要因は,全シュウ酸含有量の絶対量よりも,可溶性シュウ酸含有量の割合の高低によるものと考えられた.
    (2) ゴレンシにおけるグリオキシル酸酸化酵素およびアスコルビン酸酸化酵素の活性は,いずれの品種においても確認され,葉においてグリオキシル酸酸化酵素活性が顕著に大きい値を示した.その値は黄緑色展開葉において最大を示し,酸味系品種の活性が,甘味系品種と比較し約5倍の強度を示した.一方,葉におけるアスコルビン酸酸化酵素および果実における両酸化酵素の活性はごく少量であったことから,ゴレンシにおけるシュウ酸の生合成は,主に展開葉におけるグリオキシル酸経路が機能しているものと思われた.
収穫後の貯蔵・流通
  • 池田 富喜夫, 馬場 正, 伊藤 真悟
    2004 年 3 巻 4 号 p. 421-424
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    カンキツ‘清見’の長期貯蔵を達成するために,5℃,95%の低温高湿貯蔵約3か月後に,30,23,13,6,3℃の各中間温度処理を4日間行い,再び11月中旬まで低温高湿貯蔵を行った場合の果実品質へ与える効果を検討した.1)中間温度処理が23℃以上の場合,その後の果重の減少率が低くなった.しかし,目減りの抑えられた果実の多くに果皮障害の褐色斑がみられ,商品性を損ねた.
    2)糖度や酸度などに及ぼす中間温度処理効果は処理温度の間で差異が小さかった.
    3)果皮フラベドの抗酸化性は約9か月間貯蔵後においても処理区間で大きな違いはなかった.しかし,褐色斑を持つ低温障害果では,抗酸化性が極めて低かった.抗酸化物質の一つである総フェノール含量は約9か月の貯蔵後でも一定のレベルで保持されていたが,果皮の低温障害果では少なく,その低下は褐色斑の発症と何らかの関係をもつものと推察された.
普及・教育・利用
  • 堀江 秀樹, 伊藤 秀和, 一法師 克成, 東 敬子, 五十嵐 勇
    2004 年 3 巻 4 号 p. 425-428
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    キュウリの嗜好評価の上で,食感の評価が重要である.そこで,キュウリ果実の果肉部の肉質を評価する方法を提案した.本法では,キュウリ果肉部にプランジャーを貫入させ,プランジャーの先端が果肉中を移動する間の力の変化を記録した.プランジャー貫入中の力の変化を指標化し,CI(crispness index)とした.CIはプランジャーが果肉中を貫入する間にかかる力を2次微分し,その絶対値の和として計算した.CIはコリコリした食感のキュウリ果肉において高い値を示した.多くの果実の食感評価の指標として「硬さ(組織破断時の力)」が広く用いられてきたが,CIは「硬さ」とは異なる特性を表すものと考えられる.従来法による「硬さ」の測定ができれば,新たな装置を準備しなくともCIの測定が可能で,「硬さ」とCIを用いることにより,より精度の高いキュウリ果実の食感評価が可能になるものと期待される.
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