園芸学研究
Online ISSN : 1880-3571
Print ISSN : 1347-2658
ISSN-L : 1347-2658
土壌管理・施肥・灌水
穴掘り機械を利用した堆肥の局所施用によるニホンナシ‘幸水’の収量性および根の生長に及ぼす影響
島田 智人六本木 和夫浅野 聖子
著者情報
キーワード: 局所施用, , ニホンナシ, 堆肥
ジャーナル フリー

2005 年 4 巻 1 号 p. 27-32

詳細
抄録

高樹齢化により収量性が低下したニホンナシ‘幸水’園の収量と根重量の関係を調査するとともに, 省力的な穴掘り機械を用いた土壌中層への堆肥の局所施用が, ‘幸水’の収量性および根の生育に及ぼす影響を検討した.
1. 埼玉県内褐色低地土壌の‘幸水’成木園10園について, 収量と根重量を調査したところ, 直径1mm未満の細根重量と収量との間に有意な正の相関関係が認められた.
2. 収量, 根重量が少なかった園の‘幸水’に対して, 穴掘り機械を用いて穴を掘り, 1穴当たり20 literの堆肥を土と混和せず局所施用したところ, 対照区と比較して処理1年目から果実肥大が良好となり収量が増加し, その後, 処理2年目, 3年目および4年目においても同様に対照区と比較して収量が高まった. また, 堆肥を施用した穴を翌年から4年後まで各年掘り返し, 採取した根の状態を根量解析ソフト‘RHIZO’を用いて調べた結果, 施用3年後までは堆肥を局所施用した箇所の根は, 特に直径0.5mm以下の細根の長さが対照区に比べて平均で3倍程度と著しく増大することが明らかになり, 施用4年後の細根長は前年より少なくなったが対照区と比較しては多かった.
3. 堆肥を根域に直接投入することの有効性を調べるために, 10年生‘幸水’に対して上記と同様な位置に穴を掘り, 堆肥を施用した区とそのまま土を埋め戻した区の根の発生を調査した. 埋め戻し区では処理1年後, 2年後とも細根の根長は無処理区と同程度であったが, 堆肥局所施用区では処理2年後には大幅に増加した.
4. 以上のことからニホンナシの収量と細根重量との間には相関関係が得られ, 収量性の低下した樹に対して, 穴掘り機械を用いて堆肥を局所施用することによって, 細根長が増加し, 果実肥大量の増加などの増収効果が継続的, かつ省力的に得られることが明らかになった.

著者関連情報
© 2005 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top