抄録
暖地条件における夏季の遮光が, 甘果オウトウの光合成, 炭水化物の蓄積および結実性に及ぼす影響を調査した. 鉢植え樹を遮光率53%の遮光ネットで被覆したパイプハウスに搬入し, 葉の光合成と落葉時期を調査した. 遮光区では, 日中の葉のみかけの光合成速度は対照区よりもやや高く推移した. 遮光により落葉が遅延した. 次に, 同様の遮光処理が1年生樹の乾物重と貯蔵炭水化物含量に及ぼす影響を調査した. 乾物重には処理間で差異がみられなかったが, 樹体の貯蔵炭水化物濃度は遮光により増加した. さらに, 同様の遮光処理を5年生樹を用いて行い, 翌春の花器の発育と結実率を調査した. 遮光により胚のうの寿命が延長され, 結実率が増加した. これらのことから, 暖地条件における夏季の適度の遮光は, 貯蔵養分の蓄積を促し, 翌春の結実を向上させる効果があることが示された.