抄録
ナギナタガヤ草生ミカン園における,春肥窒素のウンシュウミカン樹とナギナタガヤによる吸収特性を把握するため,60 Lポット植え‘南柑20号’を供試し,15Nトレーサー法を用いて検討した.
草生区の樹体は裸地区に比べ,新葉の着生数が減少し,乾物重および全窒素量も少なかった.ナギナタガヤの乾物重は樹体の24%程度であった.樹体の春肥窒素吸収量は,草生区が裸地区の約47%と著しく少なく,特に新葉における差異が大きかった.草生区におけるナギナタガヤの吸収量は,樹体の約2倍であった.また,ナギナタガヤは吸収窒素の大部分が地上部に分配されていた.樹体の15N寄与率は,いずれの器官においても裸地区の方が高く,特に新生器官における差異が大きかった.一方,ナギナタガヤにおける15N寄与率は,樹体に比べ著しく高かった.春肥窒素の利用率は,樹体を比較すると草生区16.7%,裸地区35.3%であり,裸地区の方が顕著に高かった.しかし,ナギナタガヤによる吸収量を加えた草生区の利用率は51.6%となり,裸地区の約1.5倍であった.