2007 年 6 巻 2 号 p. 233-239
ブドウ‘安芸クイーン’の結果枝を用いて,環状はく皮処理の時期,幅および果粒数が果皮の着色に及ぼす影響を検討した.実験1として満開後13日および30日に1果房あたりの果粒数を13,32および50粒とし,環状はく皮を処理した.環状はく皮の影響は果粒数が少ない場合に強く現れ,満開後13日処理で果粒肥大,糖およびアントシアニンの蓄積が促進され,満開後30日処理ではアントシアニンと糖の蓄積が促進された.アントシアニンの蓄積は満開後30日処理が同13日処理よりも大きかった.実験2として満開後35,42,49,56および63日に,はく皮幅3,5,10および20 mmの環状はく皮処理を行った.その結果いずれのはく皮幅においても,アントシアニンおよび糖の蓄積は満開後35日処理で最も大きかった.一方,はく皮幅の違いによる差は小さかった.環状はく皮による着色向上は着色開始時点での糖の蓄積を伴っており,満開後30日からの糖の蓄積がその後のアントシアニンの蓄積に重要な役割を果たしていると考えられる.以上のことから,着色向上に対する環状はく皮の効果は着果負担を軽減した場合に大きく,また,処理幅よりも処理時期により大きな影響を受け,満開後30および35日処理が着色改善効果が大きかった.