2022 年 7 巻 p. 41-49
【目的】団塊の世代が80 歳を超える2030 年前後から我が国は急激に死亡数が増加する。したがって End-of-Life Care (EOLC)の在り方を考えることが、社会として喫緊の課題になっており、また現在議論されているAdvance Care Planning(ACP)を進めるためにも不可欠である。この議論のためには、モデルとなる事例があることが望ましい。そこで、本研究では国内4自治体の医療レセプト、介護レセプトを用いて、徐脈性不整脈(心停止)で急性期病院に入院した患者の特性について検討を行った。
【資料及び分析方法】分析に用いたデータは国内4自治体の2011年4月から2018年3月までの間に一般病床(結核病棟を除く)及び療養病床に徐脈性不整脈に相当する病名で入院した65歳以上患者の医科レセプトおよび介護レセプトである。一般病床および療養病床に当該病名で入院した月の当月と前月に介護保険サービスの利用がある者を本研究では対象者と定義した。これらの対象者について入院前1年間、入院後1年間の医療介護サービスの利用状況及び傷病の状況を、個人単位で医療・介護レセプトを連結したデータベースで把握し分析を行った。
【結果】観察期間中に入院前後それぞれ1年間を追跡できた症例は15,147件で、平均年齢は85.5歳(標準偏差7.3歳)、女性割合は56.8%であった。死亡者の割合は65.3%で、52.0%が入院当月に死亡していた。入院当月を見ると一般病棟に74.8%が入院している。一般病棟入院前の所在を1か月前でみると施設介護サービスを受けていた者は17%程度であった。また、訪問診療を受けていた者が17.4%と多かった。1か月前の傷病の有病率をみると心不全が45.6%と最も多くなっていた。肺炎は11.4%、誤嚥性肺炎は4.5%であった。
【考察】ターミナル期にある高齢患者が心停止となり、病院に搬送され心肺蘇生を受けるも50%が死亡退院であり、また65%が1年以内に亡くなっている状況は尊厳ある死という観点から考えたとき、このような医療の在り方は必ずしも本人の望むものではないだろう。このような状況を回避するためにもACPの実践が必要であると考えられ、そのプロセスに入るトリガーとなるイベントについて明らかにしていくことが今後の課題である。