日本ヘルスサポート学会年報
Online ISSN : 2188-2924
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DPC 対象病院に入院した高齢患者のB 項目の状況に関する検討
松田 晋哉林田 賢史村上 玄樹
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2022 年 7 巻 p. 51-63

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抄録

【目的】急性期から慢性期、在宅に至るまでの全医療機能を対象とした、中・長期的な入院に係る患者像の把握を通して急性期医療の患者像の具体的な評価指標を開発するために、DPC対象病院に入院した高齢患者のB項目の状況に関する検討を行った。

【資料及び方法】2018年度のDPCデータを用いて、脳梗塞、白内障、肺炎(誤嚥性肺炎以外)、誤嚥性肺炎、心不全、股関節骨折で入院した75歳以上高齢患者について、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度におけるB項目の各項目の変化を分析した。なお、本分析では(入院時得点-退院時得点)/在院日数×100を各項目の変化量と定義してその平均値を求めた。

【結果】年齢がすべてのB項目で自立レベルを低め、さらに入院による改善を阻害する方向で作用することが明らかとなった。傷病別にみると、股関節骨折のような運動器の疾患では入院期間が長い方がB項目が改善することが示された。他方、脳梗塞や肺炎、心不全では在院日数が長いことが有意に低い変化量に関係していた。

【考察および結論】本分析結果より、年齢がすべてのB項目で自立レベルを低め、さらに入院による改善を阻害する方向で作用することが明らかとなった。また、股関節骨折のような運動器の疾患では入院期間が長い方がB項目が改善することが示された。その要因としては入院期間中のリハビリテーションケアの提供量が多いことが考えられた。他方、脳梗塞と心不全では在院日数が長いことが有意に低い変化量に関係していた。このことは改善がなかなか得られないような重症の高齢患者で在院日数が長くなっているという、逆の因果関係が示唆されていると考えられた。

現行制度では重症度、医療・看護必要度のA項目・B項目・C項目の組み合わせで、病棟の評価が行われているが、B項目の改善が進まない高齢患者を多く引き受ける病院では、ADLケアに手間がかかる一方で、A項目・C項目で評価すべきものが少ない、及び平均在院日数が長くなることによって、診療報酬上の施設基準に影響を及ぼす可能性がある。したがって、ADLケアに着目した患者の状態像の評価についてはB項目を用いて、別途行うことが適切であると考えられる。

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