日本ヘルスサポート学会年報
Online ISSN : 2188-2924
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  • 武田 清香, 永峰 大輝, 石川 利江
    2022 年 7 巻 p. 1-16
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル フリー

    【目的】看護師の効果的なストレスマネジメント支援について以下の3つについて概観する。1)看護師のストレスに対する効果的な介入プログラムの手法、2)看護師のポジティブな心理的機能に着目した介入研究が行われているか、3)看護師のストレス介入研究で使用されている尺度について明らかにする。

    【方法】出版期間は2011―2021年5月。看護師のストレスマネジメント介入研究動向についてデータベース検索を行った。日本語文献は医中誌Web版ver.5、英語文献はPubMedにて「看護師」「ストレスマネジメン」「ストレス対処」「ストレスコーピング」「介入」を掛け合わせて検索した。

    【結果】検索された国内文献161件、英語文献292件の計453件のうち、対象とした文献は20件であった。ポジティブな心理的機能に着目した介入は、全20件の論文のうち6件(30%)であった。検討されていた心理的機能は、主観的幸福感や首尾一貫感覚であった。

    【考察】看護師のストレスマネジメントプログラムは、ストレス反応の低減に向けたプログラムが多 く実施されてきた。人のポジティブな側面に着眼した研究は少ないため、今後はポジティブ心理学的 視点を取り入れ、人の持つ強みに働きかける介入方法への理論構築が必要である。

  • 宿利 雄太, 得津 慶, 村松 圭司, 藤本 賢治, 松田 晋哉
    2022 年 7 巻 p. 17-21
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル フリー

    死亡に対する糖尿病自体の直接的な影響を、併存症の関連性を考慮したうえで推計することを目的とした。国民健康保険のレセプトデータにおける疾患間の関係性を推計するためにベイジアンネットワーク構造学習を用いた。代謝障害を併発していない場合、糖尿病単体が死亡発生率に与える影響は軽微であることを示唆する結果が得られた。このことから、糖尿病による死亡リスクの低減のために、併発症を含めた総合的な疾病管理を行うことが重要であるということが示唆された。

  • 松田 晋哉, 藤本 賢治, 大谷 誠, 中島 俊博
    2022 年 7 巻 p. 23-30
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル フリー

    現在、全国の自治体は地域医療計画及び介護保険事業計画の策定を通して地域包括ケア体制実現のための検討に入っている。この検討にあたっては医療保険と介護保険のレセプトを被保険者単位で連結し、医療介護全般のニーズを総合的に評価することが求められる。地域包括ケアのニーズは地域の人口構成や医療介護提供体制及び住居や日常生活支援のインフラによって異なるため、したがってその分析が地域単位で行われる体制があることが望ましい。しかしながら、レセプトの分析は専門的な知識及び技術を必要とするため、各自治体の担当者が行うことは必ずしも容易ではない。

  • 松田 晋哉, 村松 圭司, 藤本 賢治
    2022 年 7 巻 p. 31-39
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル フリー

    【目的】人生の最終段階における療養生活の質向上を図るための医療介護提供体制の在り方を考えるために、国内5広域自治体の医療・介護レセプトを収集し、それを個人単位で連結したデータベースを用いて、死亡症例について、死亡前24か月間の医療介護サービスの利用状況を可視化することを試みた。

    【資料及び方法】分析に用いたのは国内5広域自治体の医療・介護レセプトである。レセプトデータを個人単位で連結し、このデータベースから65歳以上の死亡症例を抽出した。次に、死亡が発生した年月を起点(死亡月、経過月=0)としてその差を経過月として24か月前まで計算した(例えば、前月は-1)。上記で把握した死亡患者について、医科レセプトおよび介護レセプトを用いて経過月ごとに医療・介護サービスの利用状況及び傷病の状況を把握した。

    【結果および考察】本分析により以下のことが明らかとなった。まず、分析結果から死亡に至る傷病のパターンとして、心不全や腎不全といった循環器系の不全症状の進行と肺炎・誤嚥性肺炎の発生が重要な契機となっていることが明らかとなった。次に、人生の最終段階においては、気分障害の有病率が10%程度あり、メンタルヘルス面での対応の必要性が示唆された。第三に、死亡前24か月間の有病率を年齢階級別にみると年齢の高い群では心不全、認知症の有病率が増加する一方で、悪性腫瘍の有病率が低下していた。悪性腫瘍診療領域では我が国においてもホスピス等の長い経験があるため、人生の最終段階におけるケアの在り方に関する議論が他領域よりは進んでいる。他方、年齢の高い群ではがんが直接的な死因になるよりは、肺炎や心不全などの死因としての重要性が増大することが示された。また、年齢とともに認知症にり患している対象者が増加しており、今後ACPを実践していく上で、代理人の選定問題を生じうる。したがって、今後、ACPを含めて人生の最終段階における医療の在り方を考える上で重要な検討課題であると考えられた。

    【結語】本分析の結果、死亡に至る傷病のパターンとして、心不全や腎不全といった循環器系の不全症状の進行と肺炎・誤嚥性肺炎の発生が重要な契機となっていることが示された。このような状態の兆候が出始める前後の時期が、ACPに関連するプロセスを本人や家族を含めた関係者と始めるタイミングであると考えられる。また、こうした死亡に至る傷病のパターンについて広く国民に情報提供することが、国民が自らの人生の最終段階における生き方を決めることを可能にするために必要であると考えられる。

  • ―ACP の在り方を考えるモデル事例として―
    松田 晋哉, 村松 圭司, 藤本 賢治, 峰 悠子, 高木 邦彰, 得津 慶, 大谷 誠, 藤野 善久
    2022 年 7 巻 p. 41-49
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル フリー

    【目的】団塊の世代が80 歳を超える2030 年前後から我が国は急激に死亡数が増加する。したがって End-of-Life Care (EOLC)の在り方を考えることが、社会として喫緊の課題になっており、また現在議論されているAdvance Care Planning(ACP)を進めるためにも不可欠である。この議論のためには、モデルとなる事例があることが望ましい。そこで、本研究では国内4自治体の医療レセプト、介護レセプトを用いて、徐脈性不整脈(心停止)で急性期病院に入院した患者の特性について検討を行った。

    【資料及び分析方法】分析に用いたデータは国内4自治体の2011年4月から2018年3月までの間に一般病床(結核病棟を除く)及び療養病床に徐脈性不整脈に相当する病名で入院した65歳以上患者の医科レセプトおよび介護レセプトである。一般病床および療養病床に当該病名で入院した月の当月と前月に介護保険サービスの利用がある者を本研究では対象者と定義した。これらの対象者について入院前1年間、入院後1年間の医療介護サービスの利用状況及び傷病の状況を、個人単位で医療・介護レセプトを連結したデータベースで把握し分析を行った。

    【結果】観察期間中に入院前後それぞれ1年間を追跡できた症例は15,147件で、平均年齢は85.5歳(標準偏差7.3歳)、女性割合は56.8%であった。死亡者の割合は65.3%で、52.0%が入院当月に死亡していた。入院当月を見ると一般病棟に74.8%が入院している。一般病棟入院前の所在を1か月前でみると施設介護サービスを受けていた者は17%程度であった。また、訪問診療を受けていた者が17.4%と多かった。1か月前の傷病の有病率をみると心不全が45.6%と最も多くなっていた。肺炎は11.4%、誤嚥性肺炎は4.5%であった。

    【考察】ターミナル期にある高齢患者が心停止となり、病院に搬送され心肺蘇生を受けるも50%が死亡退院であり、また65%が1年以内に亡くなっている状況は尊厳ある死という観点から考えたとき、このような医療の在り方は必ずしも本人の望むものではないだろう。このような状況を回避するためにもACPの実践が必要であると考えられ、そのプロセスに入るトリガーとなるイベントについて明らかにしていくことが今後の課題である。

  • 松田 晋哉, 林田 賢史, 村上 玄樹
    2022 年 7 巻 p. 51-63
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル フリー

    【目的】急性期から慢性期、在宅に至るまでの全医療機能を対象とした、中・長期的な入院に係る患者像の把握を通して急性期医療の患者像の具体的な評価指標を開発するために、DPC対象病院に入院した高齢患者のB項目の状況に関する検討を行った。

    【資料及び方法】2018年度のDPCデータを用いて、脳梗塞、白内障、肺炎(誤嚥性肺炎以外)、誤嚥性肺炎、心不全、股関節骨折で入院した75歳以上高齢患者について、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度におけるB項目の各項目の変化を分析した。なお、本分析では(入院時得点-退院時得点)/在院日数×100を各項目の変化量と定義してその平均値を求めた。

    【結果】年齢がすべてのB項目で自立レベルを低め、さらに入院による改善を阻害する方向で作用することが明らかとなった。傷病別にみると、股関節骨折のような運動器の疾患では入院期間が長い方がB項目が改善することが示された。他方、脳梗塞や肺炎、心不全では在院日数が長いことが有意に低い変化量に関係していた。

    【考察および結論】本分析結果より、年齢がすべてのB項目で自立レベルを低め、さらに入院による改善を阻害する方向で作用することが明らかとなった。また、股関節骨折のような運動器の疾患では入院期間が長い方がB項目が改善することが示された。その要因としては入院期間中のリハビリテーションケアの提供量が多いことが考えられた。他方、脳梗塞と心不全では在院日数が長いことが有意に低い変化量に関係していた。このことは改善がなかなか得られないような重症の高齢患者で在院日数が長くなっているという、逆の因果関係が示唆されていると考えられた。

    現行制度では重症度、医療・看護必要度のA項目・B項目・C項目の組み合わせで、病棟の評価が行われているが、B項目の改善が進まない高齢患者を多く引き受ける病院では、ADLケアに手間がかかる一方で、A項目・C項目で評価すべきものが少ない、及び平均在院日数が長くなることによって、診療報酬上の施設基準に影響を及ぼす可能性がある。したがって、ADLケアに着目した患者の状態像の評価についてはB項目を用いて、別途行うことが適切であると考えられる。

  • 松田 晋哉, 村松 圭司, 得津 慶, 佐藤 秀之, 藤本 賢治
    2022 年 7 巻 p. 65-78
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル フリー

    【目的】介護保険関連施策の立案評価に活用することを目的に、各自治体では日常生活圏域ニーズ調査が定期に行われている。しかし、その分析は記述統計学的なものにとどまっており、十分な活用が行われているとはいいがたい。そこで本稿では福岡県の一自治体における2016年の日常生活圏域調査の個票を分析し、地域公衆衛生活動を効果的に行うための仮設策定を試みた。

    【対象および方法】分析に用いたのは福岡県の一自治体における2016年の日常生活圏域調査の個票(2,157名分)である。女性が55.4%、前期高齢者が68%、家族構成では独居が17.0%、夫婦世帯が50.9%であった。日常生活圏域ニーズ調査には厚生労働省が予防事業対象者をスクリーニングするための基本チェックリストと古谷野らが開発した老研式活動能力指標の質問項目が含まれている。本研究ではこれらの項目について、高齢者の特性別(性、年齢階級、家族形態、仕事の有無、経済状況、住居の状況、社会的ネットワークの状況、趣味の有無など)に平均値の比較を行った。

    【結果および考察】分析の結果、自立度は男性、年齢階級の高い群、公営住宅に居住する群、経済状況の厳しい群、社会的ネットワークの少ない群、趣味のない群で有意に低いことが明らかとなった。また、独居高齢者はIADLは自立しているが、閉じこもりがちであり、その他の多くの項目で自立度が低くなっていた。本分析により、日常生活圏域ニーズ調査を詳細に分析することで、支援が必要なターゲット集団を明らかにできること、支援の内容の具体的検討が可能になることが示された。

    【結語】日常生活圏域ニーズ調査を詳細に分析することで、支援が必要なターゲット集団を明らかに できること、支援の内容の具体的検討が可能になる。

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