日本ヘルスサポート学会年報
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訪問診療の提供量に関連する要因の生態学的研究
松田 晋哉村松 圭司劉 寧藤本 賢治野元 由美
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2023 年 8 巻 p. 81-92

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抄録

目的:2018年に出された地域医療構想では、在宅医療の提供量を増加させることが目的として掲げられている。しかしながら、在宅医療の提供量は、各地域の医療介護サービスの状況や人的資源、住環境など種々の要因によって影響を受ける。この地域性を踏まえて在宅医療のあり方を考えることが実際的である。そこで本分析では二次医療圏別の医療介護関連データを用いて、訪問診療の提供量に関連する要因についての生態学的研究を行った。

方法:内閣府「経済・財政と暮らしの指標「見える化」ポータルサイト」・「医療提供状況の地域差」で公開されているSCR(standardized claim-data ratio) 、厚生労働省・介護保険事業状況報告、日本医師会・地域医療情報システムにおける特定施設定員数のデータを用いて、二次医療圏別のデータセットを作成し、変数間の相関分析および共分散構造分析を行った。

結果:訪問診療の提供量が多い二次医療圏は、診療所の外来医療、往診、訪問看護、在宅介護サービスの提供量が多く、また緊急往診や緊急時の他職種によるカンファレンスが多く行われていた。さらに、サービス付高齢者施設などの特定施設の定員数が多い地域では訪問診療の提供量が多くなっていた。なお、訪問診療の提供量は介護施設入所とは有意の負相関が観察されたが、療養病床については有意の関係を認めなかった。上記結果をもとに変数間のモデル構築し、共分散構造分析を行った結果では、介護施設および入院医療の提供量は訪問診療の提供量に対して負の関連、そして人的資源、訪問診療の支援体制、緊急時の対応体制、サービス付き高齢者住宅の提供量は有意の正相関を示していた。

考察:訪問診療を促進するためには、まず、それを提供する診療所などの医療機関があることが前提となる。また、本分析の結果は、在宅医療は施設介護サービスと代替性があり、特定施設のような介護を受けやすい住まいがあることが、その提供量を増やすためには重要であることを示している。

結論:在宅医療を促進するためには、医療サービス、介護サービスの整備だけでなく、それを促進するための住環境の整備も重要である。

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