抄録
自動運転車用半導体メーカは、変革期を迎えた自動車業界において、従来の系列的な開発スタイルからの脱皮を図ろうとしている。このため、ビジネス・エコシステムにおける位置取りを模索しているが、明確な指針が得にくい状況にある。そこで、過去に成功した部品メーカのビジネス・エコシステム戦略を戦略構築の指針とすることを目的として、P2Mの枠組みにより成功事例の戦略を記述し、この情報を戦略構築の際に参照することを試みた。ここで、自律・分散的な協業の集合体であるビジネス・エコシステムを全体最適に誘導する構図は、プロジェクトを束ねて価値実現を目指すP2Mの構図と類似していると考えた。部品メーカの成功例として有名なインテル社のビジネス・エコシステム戦略をP2Mの枠組みを活用して記述し、この情報を参照して、自動車用半導体メーカのビジネス・エコシステム戦略を検討した。その結果、業種や時代背景が異なっていても、戦略を対比的に検討することができ、戦略の具体性や質を向上するために有用であることが確認できた。