抄録
プロジェクトマネジメントは、技術システム構築志向の「目標実行型管理」方法論により支援される。これに対し、日本版プロジェクト・プログラムマネジメント(P2M)は、社会・経営システムに拡張適用が意図された「戦略実行管理」が強調される。したがって、その方法論は、プログラムマネジメントにPMが包括・整合されるように考案されている。PM見解は、安定環境における閉鎖系システムを前提にしているが、P2Mは対照的に不安定環境に対応可能な「開放系適応システム」に向けたマネジメントを開発している。その特色の背景に、洞察力、分析力、統合力を特に関連づける学理と方法論の統合がある。P2M独自の「使命起動接近」は、事業構想の源泉となる価値創造発想であり、その全体像は「アブダクション」の学理推論に支援される。さらにイノベーション問題に対応するために「複雑系」の方法論が導入され、使命の構造化にモデリングとして組み込まれている。しかし、金融危機で発生した高度の不確実性環境では、プログラムの価値獲得に課題が散見され、本社とプログラムの創造的統合への改良編集が議論となり、本論で試論が展開される。