抄録
企業において、時代の変化を見極めて足元の業務を遂行し、社会的役割を果たすために新たな価値を生むイノベーションに繋がる人財をどのように見出して磨くか社内全体の共感を得る古くて新しい問題が改めて問われている。本論文は中小企業の活性化においては、経営者と中間管理者の協働が全体の共感を得る大きな原動力になることを前提としている。そして、組織内の共感を生むネットワーク創りに関する新規モデリングにより研究の位置づけの明確化を図り、いくつかの実証実験を通して仮説検証の第一歩を述べる。モデリングはコミュニケーションの拡がりと深まりの両面からなるプロセス表現のマトリクスであり、多くの事例を説明できると同時に、課題発見にも繋がる。実証研究は、地元中小企業のアンケートやヒアリングに止まらず、研究室主催のオープンセミナーで現役経営者や中間管理者を交えた活発な議論を通して仮説の裏づけを進めた。最後には、地元の中堅企業で社内研修会を開催した。また組織の現状の課題把握のための新規診断システム「心のベクトル診断」を作成し、モデル企業にたいして現状把握と問題の明確化を図り、「共感から協創へのネットワークづくり」を主眼においた社内体質改善プロジェクトへのシナリオを確認できた。その中で本論文は、「診断」から「処方」へのプロセスにフォーカスをし、社内体質改善プロジェクトのシナリオを確認できた。