抄録
東日本大震災の例が顕著に示すように、近年の社会的なトラブル事象の多くは、個別の領域における高い専門性が複雑に絡み合って発生しており、これに対して「想定外」という表現が頻出する状況は、現代の高度・複雑化する社会システムのリスクに対する脆弱性を表している。P2Mは、個々のプロジェクトの専門性が高く、複雑に連携する現代の社会システムに対応したマネジメント手法であるが、これからの時代にさらに適応性を高めていくためには、不確実性にフォーカスした統合リスクマネジメントの観点を強化する必要があると考える。本稿では、P2Mにおけるバランス・スコアカードを適用した統合リスクマネジメントの仕組みを検討し、高度・複雑化するITシステムのトラブル事例を用いて検証する。