抄録
政府開発援助(ODA)においては、特定地域社会が広く裨益する「社会的」プログラムを対象とすることが多い。そしてその多くはミッションが開始時点では具体的でなくかつ多くのステークホルダーが関係する。本論文は、かかる複雑な社会的プログラムによる望ましい価値実現のために、必要なマネジメントの枠組みと具体的留意点を明らかにすることを目的とする。そのためにベトナムにおける農業開発と、開始より 20 年以上の実績があるカンボジアの上水道開発を採り上げ、問題構造、価値創造のプロセス、望ましいプロファイリングと統合マネジメントについて検討をおこなった。その結果、かかるプログラムでは問題が複数の次元にわたるシステム群の組み合わせとなっており、価値創造のためには多くの取り組みを統合しながら実施し、各プロジェクトの外部条件の内部化を進めることが重要であることを示した。